記憶を傷つけられた子供が辿る道
新井 「汚い記憶を植えつけられてしまった子供は、大きく分けて4つの変化を起こします。
一つ目は身体の変化。体調が悪化したり、病気になったりします。
二つ目は精神の変化。対人恐怖、自己嫌悪などになります。
三つ目は知性の変化。人間らしい高度な知性(思考力、集中力)、性格、気力(意志)が落ちます。
四つ目は行動の変化。行動パターンが変わり、引きこもりになったり、ゲーム依存、ケータイ依存、ネット中毒になります。
注意してほしいのは、これらは自動的に変化することなんです。どの子も怠けてやろうとか、対人恐怖になってやろうと考えてそうなるのではありません。
脳科学的にみてそう変化することは理にかなっているんです。」
ストレスの記憶を溜め込んだ子供は、4つの変化を起こします。
以下にまとめます。もちろん医学的な原因がないことが前提です。
1. 身体面の変化
・頭痛、腹痛/下痢、胃痛/吐き気/気持ち悪さ
・だるさ、倦怠感、脱力
朝起きることが困難、さまざまな行動を能動的に起こすことが困難になります。睡眠障害とは違い、これらがひどくなると本当にベッドから起き上がれません。
・行動停止
朝登校のために家を出たところで身体が動かなくなります。しゃがみこんだり、突然泣き出したり。家を出たところだけではなく、朝起きたとき、制服着替え中、朝食中、通学途上などでも起こります。「学校へ行きたいのにいけない、どうしても身体が動かない」。強烈な不安を感じることも多いので、精神症状の側面もあります。
・昼夜逆転
・過呼吸
・食欲不振
・ある種の病気
・腹部ガス膨満
2. 精神面の変化
・対人恐怖
・人間不信
・自己嫌悪、劣等感
自分が大嫌いになります。自分なんて生きてる価値なし、死ねばいい、あるいは死にたいとは言わないけどこの世から消えたい、など。劣等感に苛まれることもあります。
・異常反応、精神的な錯乱
学校の話をすると表情が変わり頭を抱え込んでしまう。話かけても全く無反応、明らかに頭に入っていない。「これからどうするつもり」と追い詰められたり、別に何でもない話をされても、錯乱し泣き出したりします。
・精神病状態
幼い頃(おおむね幼稚園)から対人関係のストレスを受け続けると、精神病状態を呈することがあります。
3. 知性・気力の変化
・知性の低下
ここでいう知性とは、人間らしい高度な知性です。
1. 性格や行動が変わる
性格が荒れたり、逆に極端に臆病になったり、人の意見を聴かず、正論が通じなくなります。とにかく理解不能な言動が増えます。今まで熱心に取り組んできたことをやめたりします。荒れると他者への攻撃性が増します。欲をムキ出しにし「アレを買ってくれたら学校行く」「月◯万円くれたら学校へ行く」なども。
2. 思考力の低下
思考力や判断力、集中力といった高度な知的作業力が極端に落ちます。これは知的活動(主に勉強)に対して見られます。結果、成績も急低下します。
しかし性格が荒れた場合は、屁理屈だけは超一流に。
・無気力
うつの無気力とは違い、「学校へ行く気力(意志)」「勉強する気力」「今の状態を改善する気力」がなくなってゆき、今後の人生に対する意欲も失われてゆきます。
4. 行動の変化
既述との重複は省きます。
・引きこもり
家族とすら会いたがりません。原因は甘えや怠けなどでも、家族構造の問題でも、社会の問題でもなく、不登校と同じだろうと推測します。
・中毒、依存症
男の子はゲーム中毒、女の子はケータイ、ネットやマンガ中毒など。起きている間はゲームしかしない、という子は珍しくありません。脳が記憶のストレスでいっぱいな彼らは、やっている間だけはストレスを忘れられることに依存せざるを得ないのです。
身体面はどれも検査しても「異常なし」がオチです。当然でしょう。原因は身体にはないのだから。
身体面・精神面・知力気力の悪化がひどくなると「学校どころではない、まともに生きてゆけるか」という状態になります。
子供が強いストレスを受けると、身体症状か行動の異変が必ず現れます。
お母さん 「わかります。加奈子にはいくつも当てはまります。」
新井 「子供が強いストレスを受けると、少なくとも身体か行動か、どちらかには必ず異変が現れます。そのシグナルを見逃さないことが大事なんですが、今のところ誰も気づきません。医師でもです。
この4つのいずれに落ちても、子供にとっては地獄でしょうね。
ところでお母さん、これらの中で最もおそろしい変化は何だと思いますか?」



