質問

1. なぜ子供はあなたの質問に答えてくれないのか?

頭のいいお母さんは、不登校の初期段階で、子供が学校で何かあったのではないかと感づき、子供に尋ねます。

「あんた最近調子悪いみたいだけど、学校で何かあったの?」
「学校で何かあったんでしょ?どうせ何かあったに決まってる」
「何があったの?いってごらんなさい!」

よほど素直な子供は別ですが、ほとんどの子供は口をつぐみます。すると、お母さんは

「何があったの?言わなきゃわかんないじゃない!」
「どうして答えないの?一体何考えているの?」

こうなると泥沼です。ここでお父さんが登場し、

「どうしたんだ?なにかあったんなら言ってみろ?スッキリするから」

これでもダメです。子供は答えてくれません。しまいには怒り出します。もういいからほっといてよ!といわんばかりに。

スクールカウンセラーもこういう質問をします。

「一体どうしたの?」
「何かいやなことがあったのかな?」
「今何か不安がある?」
「今どんなストレスがあるの?」

これは、子供が答えてくれない(答えに困る)典型的な質問方法です。あるいはとってつけたような答えが返ってきます。いずれも真の原因ではありません。


2. なぜ不登校の原因がわからなかったのか?

不登校の原因が従来わからなかった主な理由が、質問のマズさにあります。

立場を逆にして想像してみてください。子供のあなたが親から上記のように尋ねられたらどうですか?答えに困りませんか?答えにくくないでしょうか?

素人さんも玄人さんも、すぐに「感情」「心」に注目してしまいます。これが失敗のモト。
注目すべきは「記憶」です。しかも本人目線ではない記憶が大事なのです。

記憶を掘り起こす不登校セラピーの質問は、ほんの少し言葉が違います。
基本形は、「クラスにこういうイヤな人はいなかった?」です。

この質問は、「第三者の記憶」を聞き出しています。客観的です。感情は伴っていますが、子供も冷静に答えることができます。

もうひとつは、立場の違いです。
失敗しやすい質問は、「子供が何かをされた」という受身の形で質問しています。
それに対して私の質問は、あくまで他人が主体です。(すべての質問ではありませんが)ストレスを与えた他人の行動を聴き出しています。
この質問なら"受身で何かされた"という感じが薄まり子供は答えやすくなります。

この質問に変えるとストレスが出るわ出るわ、私も親も唸ることがあります。「学校行けなくて当然だわ。こんなにあったのか...」。

ただし、全く話せない子や、過去の記憶に触れられるのを極端に嫌がる子にはこれでもダメです。また、男の子は悔しすぎる過去は話せないようです。
親が説得する以外、こういう子にどうすればいいか...まだ私にも答えはありません。

いじめなど原因がハッキリしている場合を除き、「なぜ学校へ行けないの?」などの質問は、この段階ではしてもムダです(聴いてはならないとはいいませんが)。

なぜ?と尋ねると、その場でつじつまを合わせた表面的な答えが返ってくるか、何も返ってこないからです。人間は自分の知っている言葉でしか話せません。
つまりこの質問は表面的な答えを引き出してしまう質問です。
「この子自身は原因をどう思っているのか?」を確かめたいなら別ですが(私はその意図でこの質問をします)。


3. 聴き方のポイント

・第三者の視点で
第三者的な視点で冷静に。目的は感情ではなく記憶という情報を集めることです。

・子供の性格などは無視する
私がこのHPで「原因ではない」と断定したことは、私を信じて無視してください。

・具体的に、絞られた質問を
対象をキチンと絞るほど子供は答えやすくなります。
「何かストレスがある?イヤなことがある?」
ではなく、
「あなたのクラスに他人の悪口をいう人はいない?」
「雰囲気悪いな、近づきたくないな、って思う人はだれ?」

・粘り強く
徹底的に根本原因を洗い出します。ここでの粘りが成否の分かれ目になります。

・不明な点を不明なままにしない
愚直に粘ると、子供は何かヒントや、つじつまが合わなかったり論理的におかしな話を発します。そこが狙い目。こんな風に突っ込みます。
「それ、具体的に誰が何をしたの?」
「その人がこわいって何がどうこわいの?どうしてこわいの?」
このように、疑問点があれば絶対突っ込んでください。絶対です。
地味に粘るほど、成果はエレガントです。

・幼稚園時代から
以下の質問を、幼稚園時代から現在まで1年ずつ行ってください。いじめなど、原因はそれ以外にない場合のみ、年代に狙いを定めても良いでしょう。
もし幼稚園より以前の記憶が残っていれば、その年代から質問します。


4. 質問パターン

では、具体的な質問に移りましょう。質問の対象は基本的にクラスメート、クラブ、先生、親の4つです。パターンはどんどん増やしてください。 

4-1. クラスメート

クラスメートのストレスをあぶりだすにはこのように質問します。
- クラスでイヤなやつはいなかった?
- クラスで会いたくないやつはいなかった?
- クラスでイヤなことをされたことはなかった?
- 今はどうでもいいけど、そのときはイヤだと思ったことはなかった?
- 今はどうでもいいけど、そのときはイヤだった人はいる?
- 会ってもいいけど近づきたくないやつはいなかった?
- あなたをバカにしてくるようなやつはいなかった?
- あなたの成績をバカにしてくるやつはいなかった?
- 人からあなたの悪口を聞いたことはない?
- 誰かがあなたの陰口を話しているのを聞いたことはない?
- 君のことを嫌っている子はいない?
- クラスにおかしなやつ、変な子はいなかった?
- クラスにムカつくやつとか、ウザイやつとかいなかった?
- クラスに人の悪口ばっかり言っている子はいなかった?
- クラスにケンカをよくする子はいなかった?
- 先生とよくケンカしている生徒はいなかった?
- クラスで盗みとか物がなくなったことなかった?
- クラスの雰囲気はどうだった?
- 自分は被害はないけど、他の人がいやな目にあっているのを見たことない?
- いじめのリーダー格は誰?
- イヤなことしてきた連中のリーダー格は誰?
- リーダー格の取り巻きは何人いた?
- 取り巻きについて一人一人どんなやつだったか教えてくれる?
- 今思い出してもイヤな気分になるような出来事はなかった?
- 今思い出しても平気だけど、その当時はイヤだった出来事を教えて?
*同じクラスでなくとも(違う学年でも)ストレスを与えた存在なら聴き出します。

4-2. クラブ

クラスメートと同様に、クラブでの人間関係も強く影響を与えます。同級生も含め、先輩後輩の関係、部長、コーチ、顧問の先生などを質問の対象にします。
- クラブでイヤなやつはいなかった?
- クラブでイヤな先輩はいなかった?
- クラブでイヤな後輩はいなかった?
- クラブの部長はどんな人?イヤな人じゃなかった?
- クラブの友達か先輩(後輩)とトラブルになったことはなかった?
- クラブの練習でイヤなことはなかった?
- 顧問の先生はどんな人?
- コーチはどんな人?
- クラブの顧問の先生にイヤなことを言われたり、されたことはなかった?

4-3. 先生

先生も、子供の不登校に強い影響があります。
- 先生でイヤな人いなかった?
- ◯年のときの担任の先生はどんな人?イヤじゃなかった?
- ネチネチ怒ったり、エコヒイキする先生はいなかった?
- 頭のいい生徒だけヒイキしたり、女の子だけヒイキする先生はいなかった?
- 怒鳴る先生いなかった?
- 厳しい先生、厳しすぎる先生はいなかった?
- 先生で理不尽なことを言ったりする人いなかった?
- 生徒をバカにする先生はいなかった?
- 点数のことばっかりとか、成績のことばっかり言う先生いなかった?
- おかしなこと言う先生はいなかった?
- 自分は被害はないけど、先生からイヤなことをされている人を見たことなかった?
校長・教頭先生、学年主任、生活指導、スクールカウンセラーも要チェックです。中学以降は各科目毎に性格をチェックします。

4-4. いじめ

重要なことはいじめっ子の特定と、彼らが具体的に何をしたのか明確にすることです。
- いじめのリーダー格は誰?
- いじめはいつから始まったの?
- どんなことがきっかけで始まったの?
- 誰がどんなことをあなたにしてきた?
- 誰がどんなことをあなたに言ってきたの?
- 先生は助けてくれた?
- どんなことがあったのか教えて?
- リーダー格の取り巻き(手下、子分、ザコ)は何人いた?
- その取り巻きたちは何をしてきた?
- その取り巻きたちはどんなことを言ってきた?
- 助けてくれる人はいた?
- いじめた連中は今どうしているの?
- 同じ学校か同じクラスにその連中はいる?

4-5. その他

他に学校で何かなかったか、塾や習い事などで何かなかったかを質問します。
- 他に学校でイヤなことは何かなかった?
- 塾でこういうイヤな先生や友達はいなかった?
- 習い事でこういうイヤな先生や友達はいなかった?

4-6. 親

ごくまれに親の心無い言葉や行動が子供を深く傷つけ、不登校のきっかけを作ったり、大きな影響を与えることがあります。それはチェックしておかねばなりません。
- お父さん、お母さんから怒鳴られたことは?
- お父さん、お母さんのイヤなところは?
- お父さん、お母さんに直して欲しいところってどんなところ?
ただし初心者はほどほどに。親について掘り起こすのはかなり難易度が高くなります。


5. ストレス作因に突っ込む

これまでの質問でストレス源が明らかになったら、それについて突っ込んでゆきます。

5-1. ストレス源が人の場合

- そいつ(その先生)はどんな人?
- そいつはあなたにどんなことをしてきた(言ってきた)?

5-2. ストレス源が(人が絡んだ)出来事の場合

- それはいつ起こったの?
- それをやったのは誰?
- それはどれくらいの頻度で起こった?
- それは他の人もやられていた?それともあなただけされていたの?


6. 子供が他人を悪く言わない場合

人の悪口を嫌う子供は上記のような質問には答えてくれません。ではどうするか。

6-1. 質問

- あなたと性格の合わない子(先生)は(クラス、学年)にいなかった?
- 常識とかマナーとか、配慮に欠けるな、と思うような子(先生)は(クラス、学年)にいなかった?
- あなたに直接ではなく、「それは良くないんじゃないの?」と思えるようなことを間接的にしたり言ったりした子(先生)はいなかった?
- クラブであなたと性格の合わない先輩(後輩)はいなかった?
- 常識とかマナーとか、配慮に欠けるな、と思うような先輩(後輩)はいなかった?
- あなたに直接ではなく、「それは良くないんじゃないの?」と思えるようなことを間接的にしたり言ったりした先輩(後輩)はいなかった?

6-2. さらに突っ込む

6-1. の質問で、誰か出てきたら、次のように掘り下げます。
- その子(先生、先輩、後輩)とあなたの性格の合わないところってどんなところ?
- その子(先生、先輩、後輩、)とあなたの性格はどんな風に違うの?
- その子(先生、先輩、後輩)のことを、「常識(マナー、配慮)がないな」と思った出来事について教えて?
- どういった点についてその子(先生、先輩、後輩)のことを「常識(マナー、配慮)がないな」と思ったの?
- その子(先生、先輩、後輩)はどんなことをあなたに直接ではなく間接的に他人にしたり言ったりしたの?

7. 自ら生み出したストレスが原因と推定される場合

他人ではなく、自ら生み出してしまったストレスが原因と思われるケースもあります。この質問に関してはまだ完成していませんが、次のように話を進めてゆきます。

7-1. 怪我、アクシデント(事件、事故などを含む)、失敗などによる挫折
- いつどこでどのように怪我(アクシデント、失敗)をしたのかを詳細に聞き出す
- 怪我をしてから現在までの間、どういうことがあったのか、どう過ごしていたのか、どういう感情を持っていたのかを詳細に聞き出す
- その間、他人が何らかの形で絡んでいないか(ストレスを与えていないか)を詳細にチェックする

7-2. 何らかの耐え難い感情、感覚がある
子供の中には、他人からは理解不能な感情や感覚を持っており、それが登校を阻んでいるケースがあります(滅多にないのですが)。これはまだ私もよくわかっていません。
いずれも、失敗談やコンプレックス、イヤなタイプの人、不安なこと、自分が苦手なことなどを話の切り口にして粘り強く聴き続けると突破口が開けます。


8. 原因不明の病気がある場合

原因不明の病気、難病になって不登校となる子供がいます。膠原病、繊維筋痛症、自家中毒、etc...(カウンセリング実例をご覧下さい)
特に重い病気でなくとも、カゼなどもあります。

しかし、こういった病気が良くなっても、子供は学校へ行こうとしません。なぜでしょうか?

それは、こういった病気自体が、学校で受けた人間関係のストレスから生まれたものであるためと私は考えます。
私は実際にそういうお子さんを見てきました。その経験から、不登校もこういった病気も、根本原因は同じであると考えます。

したがって、もしお子さんが原因不明の病気になって不登校になった場合、その裏に人間関係のストレスが隠れていないかを疑ってください。


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