012 拒食症とひきこもり、無気力 女子中学生CNさん

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左からCNちゃん、新井てるかず、お母さん


【電話相談】

CNちゃんのお母さんからお電話があったのが中2の8月初めです。

小6の2月からダイエットを始め、徐々に拒食症に。2月に42kg(150cm)あったのが、中学受験して中1の夏には29kgに。

生命の危険を親が感じ、中1の6月、35kgの時点で病院へ。入院はしませんでしたが、当然体力がガタ落ちで登校が辛く、医師は「学校を休みたかったら休みなさい」と言いました。

中1の9月から少しずつ学校を休み始め、文化祭は休み、体育祭は見学。11月は週1のペースで登校しています。
翌年に入り、週2-3回のペースに登校が増えました。3月のテスト前はずっと登校。テスト後も登校。

ところが春休みに入り、宿題を終えた後、引きこもりに。1日中YouTube*)を見続け、ヘッドホンで外界と遮断。家族とも口をきかなくなりました。お母さんが話しかけると面倒くさそうに無視したそうです。

中2の新学期が始まり、始業式は行き、その次の日からまた不登校に。それから1日も学校へ行っていません。
拒食症は徐々に治り、今度は3月から過食症に。ずいぶん太ったそうです。最近は少しずつ親と話はできるようになってきたそうです。

お母さんはCNちゃんがなぜ拒食症になったのか、なぜ不登校になったのか全くわからないとおっしゃいます。

☆何にもない子が拒食症、不登校になるなんておかしい。あなたはその裏でうごめくものが見えますか?☆

新井「お母さんね、私には拒食症は単なる表面的な症状にしか見えないのです。拒食症から不登校が始まったようですが、不登校の原因が拒食症だとも思えないんです」
お母さん「どういうことですか?」
新井「150cmで42kgなら太っちゃいないけどやせてもいないですよね。もしCNちゃんが誰かから"デブ"とか言われていたらどうなると思います?」
お母さん「・・・それ、私が言ったことがあります」
新井「えっ?」
お母さん「受験が終わった頃にあの子に"ふっくらしたね"と言いました。それがきっかけだったと今になって思います」

私は小学校で強い対人関係のストレスを想定していたのですが、お母さんが?

新井「じゃあ、小学校で何かイヤな子がいたとかの話をお聞きになったことはないですか?」
お母さん「いえ、そういう話は全然」

ん?聞いたことがない?

新井「では本人は不登校の原因について何か言っていますか?」
お母さん「"周囲に合わせるのに疲れた"と」

これは対人関係のストレスを感じさせます。

お母さん「カウンセリングで良くなりますでしょうか」
新井「その前に、CNちゃんはカウンセリングを受けると言いましたか?言わなかったんじゃないんですか?
お母さん「・・・少し前に聞いたんですが、受けない、って。先生はどうしてそれがわかったんですか?」
新井「ちょっと前まで引きこもりで親とも話さなかった女の子が、見ず知らずの男のカウンセリングなんか受けるワケないでしょう」
お母さん「そうですね...」

引きこもりの子はカウンセリングを受けません。当然です。

新井「私はカウンセリングを強制できません。イヤだという子を受けさせることはできないんです。だから、受ける受けないのところはご家庭でクリアしていただくしかありません」
お母さん「はい。できるでしょうか」
新井「できるできないではなく、早くしないと。なぜかというと、この子はもうすぐ無気力になるはずです」
お母さん「どういうことですか?」

私は残酷な事実を告げます。

新井「去年の9月から不登校が始まったでしょう?多くの子は、不登校が始まって1年で再登校する意志を失うんです。あくまで平均です。2-3ヶ月で失う子もいれば3年経っても保っている子もいましたけどね。だからあと1ヶ月でCNちゃんはもう学校へ行く意志を完全に失う可能性が高いと思います。残酷ですけど。そうなったら少なくとも私の力ではどうしようもありません」

一度完全に失った意志や気力を取り戻させることは、私の技術では不可能です。

お母さん「・・・」
新井「みなさん誤解されていますが、気力とか意志は、有限です。人間に無限にあるはずがない。一旦完全に失ってしまったらもう二度と取り戻せないと思います。不登校に限らず、他のことでもそうでしょう」

☆と、今の私は考えていますが、現在この世に、学校へ行く意志を完全に失った子の再登校の意志を、取り戻せる人がいるのかどうか、私にはわかりません。"気・精・神"を扱う中国医学の賢者ならどうおっしゃるだろうか。☆

お母さんはあきらめません。心理学の素人に説得は難しい。どうすればいいのか、と食い下がられて、私は説得のいくつかのポイントをお教えしました。

よく思うのですが、みなさん問題解決に動き出すのが遅い。"早くしないと"と言いつつ、もうムリだろう、と内心では予想していました。

この日はこれで電話相談は終わりました。しかしなんと数日後、お母さんから「受けると言ってくれた」というお電話がありました。やはり娘を思う母の力は強い。

「さて、拒食症か。どんなストレスを受けてきたのか?」
強敵です。相手に不足ありません。


【第1回目カウンセリング】

CNさんとお母さんがいわきまでいらして下さり、カウンセリングが始まりました。
過食症といいますが、別に太ってはおらず顔色も悪くありません。ダイエットを初めてから現在までの情報は、お母さんから電話で伺ったとおりでした。

それ以外ではスクールカウンセリングを受けていましたが、「どこがしんどい?」「来れない時はどんな時?」「来たらどんな感じ?」などばかりで、具体的なアドバイスなどは一切なし。ご両親だけでスクールカウンセラーのところに行っていますが、これも特に進展なし。

「何やってもイライラしていた。原因はわからない(原因を考えたくもなかった)」といいますが、5月ぐらいからお母さんの話しかけに少しずつ反応するようになり、6月から先生の電話にでるように。
また食事もこのころから普通に食べ、7月からは平日の昼間スーパーなどに外出できるようになりました。

しかし同じ学校の子に会うのがイヤだといいます。話すのがイヤ、仲が良かった子でも話すのはイヤ、特に女の子はイヤ、同じ小学校だった子に会うのがイヤ、男の子は若干マシ、知らない同世代に会うのは平気とのこと。

これは性格などではなく、同じ小学校、中学校の女の子から強いストレスを受けていたことを明確に示しています。

8/7にお母さんが学校のことでCNちゃんと話し合いをしましたが、「新学期から学校へは行く。だからカウンセリングは受けなくてもいい」と拒否。

そのときには学校のことについて深く考えてなかったが、「勉強どうするの?」などと色々聞かれて、心配になってきて受けることにした、といいます。

状態は上向きで新学期から行くとは言いますが、1学期の二の舞になるのは明らかです。なぜなら、根本原因を何一つ解決していないから。

ここから突っ込んで行きます。するとまあ出るわ出るわ、彼女にストレスを与えた有害人物が。整理して書くと、次のようになりました。

(小学校)

WK子・・・クラスの女子のボス的存在。ませていてわがまま。仕切りたがり、自分の思い通りにしたい。(小学校から)髪を染めたり、タバコを吸ったり。CNちゃんとは小3から同じクラスで、CNちゃんはイヤイヤながら手下になった。パシリにしたり、仲間はずれにしたりとCNちゃんにはイヤなことをいっぱい言ったりしたりしていた。問題児として有名。

MA子・・・WK子と一緒になって色々悪さをしていた。小4くらいからCNちゃんの悪口を言うようになる。

YK子・・・CNちゃんと好きな男の子がバッティングし、CNちゃんをにらむようになる。

MSちゃん、THちゃん、MYちゃん、TKちゃん・・・CNちゃんの好きな男子について勝手な噂を流した。

(中学校)

SNちゃん・・・わがままで泣き虫。この子のことは嫌う子が多かった。人の悪口を言う(CNちゃんの悪口は言っていない)。CNちゃんの仲良しグループにいたが、CNちゃんと仲良しではなかった。口を開けば人の悪口ばかり。CNちゃんに人の悪口を聴かせ続ける。

KNちゃん AKちゃん・・・CNちゃんと3人で電車で一緒になる。時折CNちゃんを蚊帳の外にして2人だけで話をする。「CNは関係ないから聞かんでええから」CNちゃんに人の悪口を聴かせ続ける。

SEちゃん、MKちゃん・・・性格が合わない。

特に小学校時代のWK子の攻撃と、中学に入ってからのSNちゃん、MKちゃん、AKちゃんあたりからひどいストレスがあったようです。

ダイエットは、受験が終わった頃お母さんから「最近太ってきたんちゃう?」の一言があり、自分でも自覚していたので「ちょっと運動でもしてみるか」という程度だったといいます。最初は運動のみで、食事制限するつもりはなかったのですが、だんだん食べられなくなっていった、とのこと。

お母さんはWK子の事はご存知でした。長時間かけてここまで聞き出し、1回目のカウンセリングは終了。

☆原因不明の不登校の裏には、大概こういう強いストレスがあります。☆


【2回目カウンセリング】

いわきにお泊りいただき、翌日に2回目のカウンセリングです。

CNちゃんの小中学生時代のストレス履歴を一つ一つ細かく書いてゆくとスゴイ量になるので、ここからかなり端折らせていただきます。なお、記憶を取り除くのはすべてTFTのトラウマのアルゴリズムを数回使っています。

まず、MA子とYK子とのバレンタインのチョコ作りの場面。ここで好きな男子の話が出て、妬みを買います。感情はなく、映像の記憶を取り除きました。ここでCNちゃんは睡眠に入りました。お母さんは横で驚いておられます。

眠りから覚めるのを待ち、同じ場面の音声を取り除きに。しかし全く点数が減らず逆に鮮明になったため、もっと記憶を掘り起こしたところ、WK子のさらに古い記憶が出てきました。

そこでWK子に関して思い出せる否定的な1番古い記憶から、2番目までの記憶の映像と音声を取り除きました。

1番古いのは、校庭でブランコを独り占めし続けたこと。
2番目に古いのは、「給食取ってきて」とCNちゃんをパシリにしたこと。

ここで2回目のカウンセリングは終了。


【3回目カウンセリング】

1週間後、3回目のカウンセリング。
この回から、WK子に関して扱ってゆきます。

3番目に古い記憶が給食でWK子が机を割り込んできて、CNちゃんと他の子が席を移動しなければならなくなった場面。感情はなく、映像の記憶のみを取り除きました。

ここまでがWK子の小3までの記憶です。次はWK子の小4の記憶です。

MA子が転校してきたときに、WK子と初日からガチガチぶつかっていたこと。感情、音声はなく、映像のみを取り除きました。

さらに小5に移ります。プールの授業が終わり、更衣室で着替えるときに隣のクラスとケンカになりました(CNちゃん、WK子は同じクラス)。WK子が着替えながら壁を蹴り、怒鳴って隣のクラスの女の子に応酬しているという場面。感情、音声はなく、映像の記憶のみを取り除きました。

そして小6に。ここからWK子の嫌がらせが激しくなります。

まずは修学旅行。

修学旅行は志摩スペイン村へ行きました。もちろん班で行動するのですが、CNちゃんはWK子に嫌がらせされ、同じ班から外されます。
その理由は「少3か小4の時に社会見学で3人グループで行動することになっていたが、CNちゃん、MA子、YK子の3人が組んだのでWK子が除け者になったから」というもの。

思い出すと「WK子と離れたことは良かった。楽しかったし」。班決めの時の映像と音声の記憶を取り除きました。

次は消しゴム事件。

CNちゃんが消しゴムをWK子に貸したら、わずか数分後、手で引きちぎってボロボロにして返してきました。文句を言ってもWK子は平然としていたそうです。
それを先生が発見して、当然WK子は先生に叱られました。するとその晩WK子が行方不明に。
近くの子の家で発見され、WK子のお母さんが新しい消しゴムを買って渡してくれた、という顛末。

まずは消しゴムを貸した場面の記憶から。貸した後悔と貸してと言ってきたWK子の映像、音声を取り除きます。
次にボロボロに引きちぎられた消しゴムの映像の記憶を取り除きます。
次に、文句を言っても平然としているWK子の顔の記憶を取り除きます。
次に、先生に叱られ、横を向いて机にうつぶせているWK子の姿の映像を取り除きます。
最後に、夜に先生とお母さんとCNちゃんの自宅にまで謝りに来たWK子の姿。左にそっぽを向いたまま"ごめんなさい"。この映像を取り除きます。

最後はアメ事件。

WK子はアメを学校へ持ってきて、CNちゃんにもあげていたのですが、"あげたから持ってきてよ"と言い出します。それでCNちゃんも持ってくるようになったのですが、WK子は急に持ってこなくなり、先生に"CNがアメを持ってきている"とチクリました。

CNちゃんは先生に呼び出されますが、事情を話すと次の日クラスで大問題となり、WK子とCNちゃんがみんなの前で謝ることになります。ところが他にもアメを持ってきていた子が大勢いることが先生の追及で発覚、別の子らが「おまえらも持ってきてたのに謝らなかったろ」と責められるようなオオゴトに発展してしまいました。

ここまで聴き出して3回目のカウンセリングは終了。


【4回目カウンセリング】

翌日、引き続きアメ事件を扱います。

まず先生にCNちゃんが一人で呼び出された場面、次の日にWK子と一緒に先生に呼び出された場面、教室に戻ってみんなで話している場面、WK子がみんなに(形だけの気のない)謝罪をした場面に分割し、一つ一つ映像の記憶を取り除きました。感情と音声はすでにありませんでした。

その後、中学生になって一度図書館で出会っていますが、普通に挨拶しただけで終わり。なんとWK子の記憶の除去に3回もカウンセリングが必要になるとは。

・・・しかしシンデレラの継母のような子です。

次はMA子とYK子。

MA子が転校初日にWK子とガンガンやりあっていた場面、バレンタインにCNちゃんがMA子とYK子に好きな人を伝えた場面、1/2成人式(10歳のお祝いを学校でする)でYK子が「写真とったときあたしのポーズまねしたやろ」とにらんできた場面、この3つの映像と音声の記憶を取り除きました。

次はMSちゃん、THちゃん、MYちゃん、TKちゃんです。

CNちゃんの好きな男の子が◯◯君だという根も葉も無い噂が流れ、CNちゃんが「なんでこんな噂が広まったの?」とこの4人に聞くと、「WK子が言った」。

実はWK子は校庭でサッカーをしている◯◯君に大声で「CNがオマエのこと好きなんだって-!」と叫び、それを聞いた◯◯君のクラスの男子が、CNちゃんに「おまえ◯◯のこと好きなんだろ!」といきなり冷やかしに来て、CNちゃんは面食らいます。

この事件で先生が介入し、CNちゃんと一人一人が話しあい、MYちゃんとTKちゃんは謝りました。実はMYちゃんが好きだった男子がCNちゃんにコクリ、MYちゃんは妬みで噂を流したのです。

MSちゃんとTHちゃんは「CNちゃんがこの2人の好きな男子と話していたときに、2人の方を振り返って笑って喜んでいた。だから仕返しでやった」。もちろんCNちゃんにはそんなつもりはありませんが、結局お互いに謝り合ったそうです。

この噂事件に関してまた個別の場面に分割し、映像あるいは音声が残っていた場面の記憶を取り除きました。

これで小学生時代の個別の出来事の記憶は取り除きました。次にストレスを与えた人間(WK子、MA子、YK子、MSちゃん、THちゃん、MYちゃん、TKちゃん)の顔、声の記憶を取り除きました。

最後に、ダイエットを始めた時の記憶を確認しましたが、全然思い出せない、といいます。ガリガリに痩せていた自分の姿も思い出せないのです。

☆CNちゃんが小学生時代にどれほどのストレスを与えられてきたか、おわかりになったと思います。だからほんの軽い一言で拒食症になったのでしょう。☆

これで小学生時代の記憶の除去は終わり。中学生時代に入ります。
 
SNちゃんKNちゃん AKちゃん
SEちゃん、MKちゃん・・・性格が合わない。

まずAKちゃんから扱います。
この子とが一番表面的、口だけの付き合いだったといいます。人の悪口を言っている場面は記憶なし。
では悪口を直接聴いている場面ではなく、AKちゃんとMKちゃんが2人で秘密事を話し、CNちゃんが「何話してんの?」と聞いても、「CNには関係ない」と突き放す場面を扱い、映像の記憶のみを取り除きました。

他の子は、この回では具体的な記憶が出てきませんので、SNちゃんを扱います。

SNちゃんのことを思い出すと、「イライラしてくる。グズグズしている。見たくもないし、話したくもない」。もし目の前にいるとイメージしたら?「イヤ」。D=10。

CNちゃんは直接被害を受けたわけではではないのに、こんなにイヤなのは何かありそうです。それを尋ねると、「入学直後に教室でみんなの前で自己紹介するときに緊張で泣いた。すすり泣いた。それからも発表の時は泣くことが多かった。でも教室でうるさいし、叫ぶし」。

ここまで聴いて、4回目のカウンセリングは終了。

終了後、お母さんからこんな手紙を見せていただきました(原文そのまま、名前のみ変更)。

「お父様、お母様へ
私、CNはもう生きる気力をなくし、生きている意味などもありません。中学生になってからほとんど学校を休みつづけ、高校への進学も危ないと言われています。
私なりに、この中学一年生をがんばったつもりです。それでも毎日学校へは通えず、家でひまをもてあまして過ごしていた日がほとんどでした。
最後まで勝手してごめんなさい。
今までありがとうございました。さようなら。
家族や友達、みんなを大好きだったCNより」 

自殺を考えていたのか。対人関係のストレスはここまで子供の生きる気力を奪い、追い込むのです。

この手紙はお母さんが5月か6月にゴミ箱から拾い、CNちゃんに見つからないように私に見せてくれました。

また、お母さんから実は不登校が始まったときにお父さんがCNちゃんを怒鳴ったか殴ったか(どちらだったか私の記憶がハッキリしません)したが、それについてはどうか、と聞かれました。

また、お母さんは度々お父さんから暴力を受けてきたそうです。しかもCNちゃんの不登校に対して「オマエの育て方が悪いんじゃ!」と罵詈雑言を浴びてきていました。(今現在CNちゃんに対しては何も言ったりしたりはしていないそうです)

私は基本的に親の悪影響は他人に比べて小さいと考えています。常識とは正反対の考えです。しかし暴力や人格否定的な暴言は他人と変わらぬ悪影響があるようです。それをお母さんにお伝えして、次回CNちゃんに聞いてみることにしました。


【5回目カウンセリング】

2週間後、5回目のカウンセリングです。これ以上いわきに来るのは難しく、今回と明日で最後とのこと。しかしまだ中学生編が始まったばかりなのですが、終えることができるか?

すでに2学期が始まっていましたが、もちろん予測通り学校へは行けていません。

お母さんはCNちゃんの様子を「元気になってきています。家にいるのが退屈そうです」と教えて下さいました。では外出するかというと別で、外出して女の子と会うのがイヤなのは変わりません。

まずはSNちゃんの続きから。今SNちゃんに関して思い出せることを思い出してもらい、映像、音声、感情のいずれかが残っている記憶を扱います。

入学直後に緊張で泣いた場面。思い出すと「何で泣くの?」というイラ立ちと疑問感があります。この感情、映像の記憶、音声の記憶をゼロに。
次に、テストが返され、SNちゃんの点数が相当悪かったらしく、自分の席で泣いていた場面。これを思い出すと「何で?」という疑問感。この感情と映像の記憶を取り除きました。

色々出てきたのですが、映像、音声、感情のいずれかが残っている出来事はこの2つだけ。

最後にSNちゃん自身の顔、声、SNちゃんに対する感情です。SNちゃんに対する感情は「関わりたくない、メンドくさい」。D=4で、以前に比べかなり低下しています。これらを全て取り除きました。
 
次にSEちゃんです。直接の出来事の記憶は思い出せなくなっていました。では、SEちゃん自身の顔、声、SEちゃんに対する感情です。SEちゃんに対する感情は「雰囲気がイヤ。あまり眼を合わせてくれなかったような気がする」。D=3-4で、これらを全て取り除きました。

次はAKちゃん。CNちゃんとAKちゃん、KNちゃんの3人で電車に乗っているとき、AKちゃんがクラスメートの女の子に"好き、普通、嫌い"の点数を付けていた場面。CNちゃん自身は自分が同点をつけられたのか聞いていません。これを思い出すと「最低」。この感情と映像の記憶を取り除きました。

AKちゃんに関しては他に記憶はなかったため、顔と声の記憶を取り除きました。

次にKNちゃん。KNちゃんに関しては特に思い出せることがなくなっていたため、顔と声の記憶を取り除きました。

次にMKちゃん。悪口を聞かされた場面は、「テニスでいろんな人とケンカしたとかで、その悪口を聞かされた。自分は悪くないと思って謝らなかったそう」。この場面は映像の記憶のみ取り除きました。MKちゃんに関しては他に記憶はなかったため、顔と声の記憶を取り除きました。

これで、個別の子供に関しては終了。念のために先生について確認してみると、2人いました。社会のON先生とUS先生。ON先生はよく怒鳴る性格で、授業はかなり怒鳴り声に満ちているようです。怒鳴り声は思い出せず、先生に対する恐怖心のみ取り去りました。US先生の方は特別な記憶もなく、本人の顔、声、感情もありませんでした。

これから、過去の記憶ではなく、登校に向けての感情を整えてゆきます。

まず、「女の子と会うのがイヤ」から。特定の子がイヤなのではなく、女子は全員イヤです。女子とは中1と中2で同じクラスだった子です。男子は大丈夫。そこで、誰かとどこかで会ったとイメージしてもらい、その時感じるイヤさを取り除きます。
次に、中1、中2で同じクラスだった子がこの部屋いっぱいにいるとイメージしてもらい、そのイヤさを取り除きました。


【6回目カウンセリング】 

翌日、これで最後のカウンセリングです。

実際に登校することをイメージしてもらい、その時に出てくる不快な感情などを取り去ってゆきます。朝起きるところから、帰宅するところまでを一つ一つチェックします。すると、「引っかかりがある」といいます。

・朝食時・・・食べたくない。食べたら行かなあかんし。
・制服に着替える時・・・制服に着替えたくない。
・家を出る時・・・なんかモヤモヤしたような、苦しくなるような感じ。
・駅まで送ってもらい車を降りる時・・・気持ち悪くなる。吐きそうな気持ち悪さと、何か気持ちの塊が出てくる感じ。加えて身体がだるい。動きたくない。
・電車を降りる時・・・降りずに遠くの駅まで行って遊びたいな。こんな重いカバンを持って学校まで歩きたないな。
・校門まで来た時・・・こんな長い階段歩きたないな。
・授業が始まると・・・眠くなるし、受ける気がせえへん。受けたくない。保健室で寝たい。
・昼食時・・・気持ち悪くなる。お弁当を前にすると吐き気がする。
・昼食後・・・腹一杯で、保健室行って寝たいな。
・午後の授業になると・・・早よ帰りたい。

いっぱい出てきますね。全てのステップで「イヤ」が出てきます。
これらを一つ一つトラウマのアルゴリズムバージョン2(拙著「不登校セラピー」第四章参照)を使って取り除きました。さらに追い込みます。お迎えのところにまだ引っかかりがあるようです。

・駅でお迎えを待っている時・・・待つのが長いと、寒いからイヤ。
・車で学校まで送ってもらうと想像すると・・・駐車場で降りるのがイヤ。学校行くのがイヤ。校門の前で降りるのもイヤ。

これらもトラウマのアルゴリズムバージョン2で取り除きました。これで登校に関しての抵抗感はないと言います。

最後に、お父さんのことについて確認しましたが、自分がお父さんに怒られた記憶はない、と言います。ただ、お父さんがお母さんを怒鳴っている声は思い出せました。1階で怒鳴っていたり、物を投げたり、お母さんも言い返したり。この記憶に感情はありませんでしたが、残った声の記憶を取り除いておきました。

ここで終了。確認します。

新井「行けそう?」
CNちゃん「・・・」

こう尋ねて、「行けます」「行きます」と答えなければ失敗です。
CNちゃんの答えは「行く気がない、絶対イヤなわけじゃないけど行きたいと思わない」でした。

残念。やはり無気力化に間に合わなかったか。私はCNちゃんの地元で信頼できるTFTセラピストを紹介して、カウンセリングを終了しました。


【結末】

数週間後お母さんよりご連絡がありました。「CNの誕生日をきっかけに友達が誘ってくれて、行きました」。
それ以来元気にではないが登校し続けているとのこと。

・・・ギリギリセーフ。完全無気力になってはなかったか。

さらに数週間後お母さんより「休んでいい?と聞かれるんです」。
あの連中とは縁が切れ、彼女はクラスで話す友達がおらず、学校へ行っても独りなのだというのです。

現在綱渡り状態で彼女は登校を続けています。


【重要ポイント】

問題が起きたときに親も医師もスクールカウンセラーも裏のストレスを見抜けなかった。それが不登校を引き起こし今の綱渡り登校につながった。
・対人関係のストレスは子供を自殺に追い込む可能性がある。
・再登校後は学校内の人間関係に周囲の大人が気を配らなければならない。

*)インターネットの動画サイト

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