014 集団リンチ 女子中学生ESさん



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新井てるかずとESちゃん(撮影はお母さん)

 
【電話相談】

お母さんから電話をいただいたのが9月でした。

8月にESちゃんが女子高校生と女子中学生に脅され、カラオケボックスに呼び出され、集団リンチを受けたというのです。

しかも親友だと思っていた子が中学生のメンバーの中に入っていました。恋愛がらみのトラブルです。

殺されると思ったESちゃんはコンビニのトイレに逃げ込み、お母さんに助けられました。

今は対人恐怖で外出不可能に。勉強の意志はあり、学校へも行きたい(今の学校はイヤ)のだそうです。パティシエになる夢もありますが、どうして良いかわからない、といいます。

お母さんは心療内科ではなく、私のHPを見つけてすぐお父さんと話し合い、即申し込まれました。リンチ犯の告訴は考えていません。

当人はカウンセリングを受ける意志はあるということで、再登校の意志は確認せず(そんな場合じゃない)、すぐに行うことに。外出は、家からカウンセリング場所まで一度も車から降りないならナントカ、とのこと。

時間との勝負です。深刻なトラウマは脳に深刻な変性を引き起こします(拙著「不登校セラピー」第三章参照)。一日でもトラウマ除去が遅れると、子供なら社会復帰がどれほど遅れるのでしょう。

私の技術が通じるか?少女を救えるか?またハードボイルドの幕開けです。


【1回目カウンセリング】

電話相談から10日後、スケジュールをこじ開けて1回目のカウンセリングです。ご両親が付き添っていらっしゃいました。よく来ることができたな、と感心します。

みなさん表情が暗い。特にESちゃんの目の下にはヒグマが。というほどの見たこともない巨大なクマです。しかしファッションセンスがよく、元気だった頃はさぞかし可愛かったろう、と想像させます。

あの日の記憶を思い出すのは拷問だろう、しかし私はあえて傷口を開きます。ESちゃんも覚悟はできていたようです。

まず背景から。

もともとリンチのメンバーとESちゃんは仲間でした。あまり良くないのと友達なんだな、とお母さんは心配していたそうです。

一方ESちゃんは、KN君という男の子と付き合っていました。
しばらく付き合って別れたのですが、KN君はその後メンバーの一人YK(高校生)と付き合います。
しかしそれを知らなかったESちゃんは、YKとKN君が付き合いだしてからもちょくちょくKN君と会っていました。

YKのことを知ったESちゃんは会うのをやめましたが、KN君にはまだ思いがあったESちゃんはブログにKN君のことを書き、それを見たYKは激怒。

これとは別に、YKの先輩にAZ君という男の子がいるのですが、モーションをかけてくるAZ君がESちゃんは嫌いで、そのこともブログに書いたらこれもYKの目に触れ、怒りを誘いました。そして集団リンチへ。

リンチメンバーは6人。
高校生・・・YK、EK。
中学生・・・AM、MZ。この2人は他校生。MK、YMが同じ中学。MKは元親友、つまり裏切り者

積極的に暴行を加えたのはYK、EK、AMの3人。他はどちらかというと見ていただけ。

処刑当日
朝5時にYKからメールが来ました。「起きてる?」もちろんESちゃんは眠り姫。
姫の眠りを覚ましたのは、悪魔のくちづけでした。

気づいたESちゃんが「ねてました」と返信したら、YKとEKから電話が来て色々言われた後、「午前10時にカラオケボックスKYに来い」と命令されました。

明らかに危険を感じましたが、断ると後で何をされるかわかりません。ESちゃんは10時に指定されたカラオケボックスに行ってしまったのです。

その時いたのはYK、EK、AM、MZの4人。まずカラオケボックスの前でKN君のことを話した後、中に連れてゆかれました。そして本格的なリンチが始まったのです。

もうグチャグチャになっている時に部屋に入ってきたのはMKとYM。その時のESちゃんのショックはどれほどだったのか。

カラオケボックスに入ってから2時間半後、YKはAZ君に連絡を入れ、「今から謝りに行かせるから」と全員でカラオケボックスを後にしました。

ESちゃん、MZ、YMは自転車、残り4人はタクシーでAZ君のところに向かったのですが、ESちゃんは「殺される、逃げるなら今しかない」とわざとゆっくり漕ぎ、自転車組から離れたスキにコンビニへ逃げ込みトイレで息を潜め、お母さんに電話をかけ、救出してもらいました。

事情をきいたご両親は当日の夜、ESちゃんを連れ、AZ君の家へ謝りに行きました。
ESちゃんは車から降りれず、ご両親だけ。
ところがAZ君は事情を知らず、「あ、そうだったんですか」と。

つまりYKとEKの暴走だったのです。

お母さんはなぜこんなことが起きたのか知りたかったので、MKに電話しEKにつないでもらいました。そこでKN君との男女間の問題の存在がわかったのです。

それ以外にも、ESちゃんは背も高く成績優秀(5教科オール5)、ファッションと容姿で目立つのでシメられた、という面もあったそうです。

EKは「YKも傷ついているんです。YKがKN君と別れたこと、ESちゃんがKN君と会ってないとウソをついたこと、そっとしておいて下さい」と言い、お母さんは引き下がりました。

翌日から、自分の部屋から出ず、食事もほとんど摂らなくなってしまいました。心配した別の友達が家に来てくれましたが、その子とも会いたくなく、帰ってもらいました。

夏休みが終わり、実は1日登校しました。早めに行けばMKに会わないので、仲の良いMDちゃんと一緒に行くことに。しかしMDちゃんはMKとも仲が良いので、2人が話していると気まずく、「自分がいると2人を気まずくさせているんじゃないか」と思い始めました。

そして翌日朝、ヒマでMKのブログを見ていたら、ESちゃんの悪口が。
その後学校へは行っていません。ケータイにも触っていません。今は学校の友達との交流は一切なし、電話にも出ず。

最後の登校前日に学校に事件を話したら「もっと早く話してもらわないと困る。私(担任)が送り迎えしても良い」と言われ、さらに翌日「学校を休ませてくれ」と伝えると数日後、「なんで来れないんですか、原因は何ですか」。

呆れたお母さんは「そんなことわかっているじゃないですか。こんな状態で行けとは言えません。今専門のカウンセラーにみてもらうところです」とピシャリ。

今はその頃より少し回復して、食事は3回摂り(量は少ない)、自室から出ないということはなくなり、昼間に洗濯物を取り込んだり家事をやってくれるそうです。

ここまでが背景。
・・・聴いた私はため息を漏らしました。

こらアカン。

ハードボイルドが生卵に戻りました。私は過去大人のトラウマもかなり扱いましたが、最悪のエグさ。セラピーの北斗神拳TFTが一瞬たじろぎます。

しかし明らかに私にESちゃんの命運が託されています。

私は自分の技術力をもう一度思い出します。
リンチのようなトラウマだろうか、不登校を引き起こすストレスだろうが、本質は同じ。どちらも構成因子はたった3つ(拙著「不登校セラピー」第三章参照)。

その3因子を除去すれば、ストレスもトラウマも平手打ちでサヨナラできます。TFTを応用したその技術をコツコツ積み重ねてきました。

ESちゃんに今必要なことは、癒しじゃない。
いける。
少女は自ら傷口を開いて見せてくれた。
私は勇気を持って、リスクをとって攻めよう。
少女のエレジーなんざ聴きたくない。

私は腹を決めました。

先に記憶を除去すべきは、積極的に暴行した3人か、裏切ったMKです。
誰を先にすべきか考え、今回のリンチの主犯格YKからとしました。

[YKの記憶除去]

YKとEKとの最初の出会いは、HPでした。ESちゃんのHPに「YKだよ」とメールが来て、返信したのがきっかけです。
YKとEKは不良っぽい連中と絡んでいるので、呼び出しを断れませんでした。YKは通信制高校ですが、ちゃんと通っていないそうです。EKは普通高校にちゃんと行っています。

今回の事件以前はYKともEKともトラブルはありませんでした。ならばリンチ当日から除去してゆきます。

当日の朝、YKから「10時に来い」、EKからも「ちゃんと10時に来いよ」と1回ずつ電話がありました。YKの電話の記憶を思い出すと「こわい」。D=7。その場面は自室で、V=10、A=10(携帯のYKの声)。
映像は自室なので取り除けず、恐怖と声の記憶をトラウマのアルゴリズムで除去。

次はカラオケボックスの外でYK、EK、AM、MZの4人と話した場面。思い出すと「こわい」が7.5。V=8、A=6。恐怖はトラウマのアルゴリズム3回でゼロに。映像と音声はトラウマのアルゴリズム5回ですべてゼロに。YKに焦点を絞っています。

次はカラオケボックスの中です。詳細を聴き出します。

話はKN君のことから始まります。ESちゃんとKN君が会っていたことがバレ、YKは「ウチもう続けらんない。別れる」と言い出し、その場で携帯をかけ、泣きそうになりながら別れ話をしていました。

YKは「会ってたんならESのことが好きなんじゃないの、もしそうだったらまたつきあったら」と言い、ESちゃんは好きじゃないと否定、そんな会話が続きました。

そしてEKが「YKに謝れ」と言い出し、謝ろうとしたらさらに「土下座しろ」。ESちゃんは土下座。しかし怖くて声も出ていないので「聞こえない、もっと大きな声で話せ!」と口々に怒鳴り始め、始めにAMがウーロン茶をESちゃんにかけ、YKとEKに殴られ、EKにコーラをかけられました。

ここでMKとYMが部屋に入ってきました。

また色々言われ、またEKが殴り、「ムカつくんだったらウチのこと殴ってみろよ」とふっかけ、ESちゃんは「いや、先輩だから殴れません」と答えます。この会話が10回ぐらい続き、またEKがキレ、また殴られ...

ここで時間終了。YKとEKが「先輩のところ連れて行くから」と外に連れ出されました。

なんだこりゃ?EKが一番エグいじゃないか。お母さんの話を聴いて「こいつ少しは殊勝なところがある」と一瞬思った自分がバカだった。旧日本軍の鬼軍曹のようです。EKを先に記憶除去すればよかった。しかしYKも同じぐらいでしょう。

カラオケボックの中での個人の暴力行為の記憶は、時間の順番が曖昧のようなので、思い出せる行為を一つづつ挙げてもらいます。

まずYK。
最初パーで顔を5回ぐらい叩きました。それ以外では「殺すぞ」「ムカつく」という意味のことを色々言いました。

顔を殴られた場面を思い出すと、湧き出る感情は「こわい、逃げたい、痛い」。それぞれ①D=5、②D=6、③D=4です。痛覚の記憶を保持している子に久々に出会いました。
その場の映像の記憶の鮮明度はV=6、音声の記憶の鮮明度はA=5。
どんな音声かというと、無言で叩いてきたため、叩く音と、周囲のメンバーの話し声。
それにEKとYKの「自分が悪いんだぞ」という声。

この場面を思い出し、「逃げたい」を特に感じてもらいながらトラウマのアルゴリズムを
3回繰り返し、①②③すべてゼロに。ちょうどここでタイムアップ。

大事なのは、人物を分離して扱うことです(拙著「不登校セラピー」第四章"記憶除去の法則"参照)。YKならYKのみを一気に除去にかかります。トラウマのアルゴリズムも、YKのみに意識を集中させます。

ESちゃんは「早く良くなりたいからカウンセリングを続ける」と明言してくれ、次回へ。


【2回目カウンセリング】 

10日後、2回目のカウンセリングです。今回もご両親がいらっしゃいました。

前回からの変化は、まず頭痛があったことです。これは私の方法(イヤな記憶を思い出してもらわねばならない)に伴うもので、お詫びを述べました。

ところが、ESちゃんは先週の水曜日に日中1人でヨーグルトを買いに外出したのです。以前は「絶対外に出たくない」と言っていただけに、ご両親は驚愕

本人は「誰に会うかわからない恐怖が少し減った」と言います。

私はTFTの開発者ロジャー・キャラハン博士に感謝を伝えたい。また子供が救われました。
ただこれはうまく行き過ぎです。まだYKの一部の記憶しか取り除いていないのに。

前回の続き、YKが顔を叩いたことを思い出すと「今はこわくない」。映像と音声が少し復活していたのでもう一度ゼロに。

次はYKのセリフです。一番記憶がはっきりしているのは「ムカつく」。
このセリフを思い出すと「こわい」D=3。A=4。
もう一つ思い出せるのが「殺す」。このセリフを思い出すと「こわい」D=3。A=3。
「ムカつく」はトラウマのアルゴリズム2回で感情も音声もゼロに。
「殺す」は1回でゼロに。

他にこの場所でYKについて思い出せることを徹底的に除去していきます。

まず、ずっと座ってるYKの姿。
思い出すと「また手を出してくるんじゃないかと不安」D=2。V=5。A=4。
これらはトラウマのアルゴリズムを5回繰り返しすべてゼロに。

他にカラオケボックス内でのYKの姿について残っている記憶はない、ということなので、カラオケを出てからのYKの記憶について扱います。

まずは歩いているYKの姿。思い出すと「別にこわくない」。V=4。A=0。これはトラウマのアルゴリズムを4回繰り返してゼロに。

これ以外にこの事件でのYKの姿は記憶が残っていない、ということなので、この事件以前のYKについて確かめましたが、不良っぽい連中と絡んでいることは知っていたものの、実際にその場面は見たことがない、といいます。

最後にYK自身について。YKを思い出すと「こわい」D=3。顔のV=4。声のA=2。色白で二重の美人だといいます。トラウマのアルゴリズムを2回繰り返してこわさをゼロに。

ここから私は徹底的に追い込みます。

これは絶対に不安を残してはいけないからです。ひとかけらでも不安があると不登校の子供は動けなくなってしまう性質があるのです。

近くにYKが立ってこちらを見ている、とイメージしてもらいます。するとまだこわさが出てきます(D=5)。これをトラウマのアルゴリズム4回でゼロに。

次に目の前のイスにYKが座ってこっちにガンを飛ばしている、とイメージしてもらうと、またこわさが出てきます(D=7)。これもトラウマのアルゴリズム5回でゼロに。

次に真横にYKが座ってこっちを見ている、とイメージ。またこわさが出てきます(D=4)。これもトラウマのアルゴリズム3回でゼロに。

さらに徹底的に絞り上げます。

もし街中へ出て会ったら、とイメージしてもらいます。近くの駅が会う可能性が高いので、そこで会ったら、とイメージ。すると不安感が出てきます(D=4)。これもトラウマのアルゴリズム5回でゼロに。

他に会う可能性の高いところはない、ということで、YKの現在の顔と声の記憶の鮮明度を確かめます。するとV=2、A=0にまで下がっていました。トラウマのアルゴリズムを回でゼロに。

もう一度徹底的にチェックします。街中出会ったとしたら?隣りに座って肩に手をかけてニラんできたとしたら?いずれの設定にも「こわくない」。お母さんが横でうなづいていらっしゃいます。

これで一旦YKについては記憶除去終了。全員の記憶を片付けた後、もう一度チェックすることをESちゃんとご両親に告げます。

さあ次は(実は一番悪質だった)EKの記憶を退治しましょう。

[EKの記憶除去]

事件当日の朝のEKのメールから。「起きてる?」でした。
これを思い出すと「別に」。こわくない、という意味です。

次はEKからの直接電話です。「遅れないでちゃんと来いよ」。
思い出すと「こわい、早くしなきゃ」。もう過去のことなのに早くしなきゃ、と感じるのです。
こういう所を汲みとってやらねばなりません。

こわいがD=3、早くしなきゃがD=1。電話なので音声がA=1。だいぶ記憶が薄らいできました。
トラウマのアルゴリズムを2回繰り返して感情、音声ともにゼロに。

次はカラオケボックスの前で会ったEKの姿です。話の内容は「もう思い出せない」。この場面をEK中心に思い出してもらい(拙著「不登校セラピー」第四章 記憶除去の法則参照)、出てきた映像の記憶(V=3)をトラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

これからカラオケボックス内でのEKの記憶を除去します。
まずはEKの行為を並べ上げます。
暴力は、殴る、髪を引っ張る、ジュースをかける。
言葉の暴力は、「ムカつく」「殺す」他思い出せないぐらい多数。

まず"殴る"から。EKは腹をグーで殴るのです。何回殴られたかはよく憶えていません。
思い出すと「こわい」。痛覚の記憶はありません。

こわさはD=4。殴る場面のV=4、A=2(周囲の物音。殴るのは無言)。
恐怖と映像(音声)をそれぞれトラウマのアルゴリズム2回ずつでゼロに。

次は"髪を引っ張る"。前髪です。何回引っ張られたかは憶えていません。
思い出すと「こわい」。これも痛覚の記憶はありません。
こわさはD=3。V=4、A=1(周囲の音)。トラウマのアルゴリズム3回ですべてゼロに。

ここで終了。


【3回目カウンセリング】

9日後、3回目のカウンセリングです。お母さんが同伴です。前回までお父さんが車を運転されていわきまでお越し下さっていましたが、もう大丈夫と判断なさったのでしょう。

前回からの変化は、

・顔が明るくなった。ヒグマはミーシャに。
・今日は高速バスでいわきまで来ることができた。朝早い便なので駅も大丈夫。
・前回から外出はしていないが(用事がないため)、こわくなくなった。

かなりイイ感じです。あれほどのトラウマを持つ14才の少女が、2回で外出がこわくなくなったのです。ポイントは、外出恐怖を直接消していないことです。
その恐怖を生み出す素を除去しただけです。

さて、前回の続きです。EKの暴力の記憶を始末します。

まずは"ジュースをかけられた"から。EKとESちゃんは立っており、2人とも無言でした。この場面はもう感情がなく、映像の記憶のみ除去。

次は言葉の暴力です。「ムカつく」から。
ところがこのセリフ、映像の記憶はなく、音声の記憶は
「忘れてきた。最近誰にも会っていないのでみんなの声が混ざって誰が誰だかわからなくなった」
といいます。
思い出しても感情もナシ。

「殺す」も同様。他多数のセリフは「もう思い出せない」。
EKとの1対1の会話の内容も思い出せない、といいます。

ならば、と私がまた徹底的に絞り上げます。
「YKに謝れ、土下座しろ」は?と水を向けると、やはり憶えていました。
V=3、A=2。感情はナシ。
トラウマのアルゴリズム2回で映像も音声もゼロに。
このときESちゃんは笑っていました。

次に「ムカつくんだったらウチのこと殴ってみろよ」ですが、これももう感情がなくV=2、A=3。
トラウマのアルゴリズム2回で映像音声ともにゼロに。

このやりとりの後、腹を殴られた映像は「思い出せない」。

カラオケボックスを出てからのEKの記憶は、前を歩いている後ろ姿の映像だけ。V=3。トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

これ以降EKとは一切接触がありません。

では、EK自身のことについて扱います。

EK自身のことを思い出すと?「別に」。
ならばまた徹底的に絞り上げます。

今この部屋に入ろうとしている、とイメージすると?「今なら普通にしてられそう」。何かされたり言われたりするんじゃないか、などの不安は?「今だったら言い返せそう」。

近くのイスに座っているとイメージすると?「1対1だったら大丈夫そう」。

真横に座っているとイメージすると?「ビミョー。1対1だったらこわくない」。

駅へ行ったらまたEKと会うんじゃないか、という不安は?
「EK1人だったらこわくない。先輩が大人数でいたらこわいかも」といいます。
先輩は多いとき30人が集まるそうです。

他に会う可能性の高い場所は?「駅前のお祭り」。
お祭りで会うかも知れない、という不安は?
「EKらは1人では行動しない。複数で行動します」。
だから、いればすぐにわかる、ということ。

では最後にEKの顔と声です。
顔の映像の記憶の鮮明度はV=2。声の記憶の鮮明度はA=0。
トラウマのアルゴリズム2回で映像をゼロに。

これでEKについては終わりですが、このあたりから、リンチの裏にあった複雑な人間関係が現れます。

「30人集まる」ということについてチェックしておきます。
駅前の大通りの祭りには、YKとEKのグループ(高校生中心)が集まってきます。

この先輩連中は、いるだけならいいけど、必ずESちゃんに話しかけてくる(目立つし名前が知られている)ため、全員に挨拶しなければなりません。

「ESちゃんでしょ?」と聞かれて「はい」と答えるけど、誰かも知りません。この事件の前からESちゃんは「会いたくない」と思っていたそうです。ただし「こわい」はナシ。

駅のゲームセンターで会う場面を想像してもらうと、「イヤ(会いたくない)」がD=8。
トラウマのアルゴリズムを1回行いましたが点数は減らず。

根っこを訊くと、小6の頃、みんな「中学に入ったら先輩に眼をつけられる」と不安がっていたそうです。実際中学に入って、中1の頃は良かったのですが、中2になると先輩とはしゃべりづらくなりました。

「ESちゃんが先輩の悪口を言った」というデマが流れたそうです。そのデマを流したのがAMでした。AMはかなりのウソつき少女で、コイツのために先輩から殴られた子もいるほどです。

さあ次はAMの記憶とサヨナラです。

[AMの記憶除去]

リンチの当日朝。
カラオケボックスの前では、AMとは話はしていません。
この場面はV=3、A=0。感情はナシ。
AMに焦点を絞ってトラウマのアルゴリズム2回で映像をゼロに。

次はカラオケボックスの中です。
AMの行為はウーロン茶をかけたことと、「聞こえないからもっと大きい声で話せ!」とヤジったことの2つです。それ以外は見ていただけでした。

まずはウーロン茶から。かけたのは1回だけ。
思い出すと感情は「今は別に」。この場面はV=3、A=0。
トラウマのアルゴリズム2回で映像をゼロに。

次はヤジ。思い出すと「今は別に」。
この場面はV=2、A=0。AMが座っているところです。
トラウマのアルゴリズム1回で映像をゼロに。  

カラオケボックスの中では他に座っているところを思い出せます。
V=1。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。 

AMに関しては他にカラオケボックスでは思い出せることがなく、ボックスを出てからのAMの姿も記憶が残っていませんでした。

AM自身のことを思い出すと「関わりたくない」。恐怖はないようです。
"関わりたくない"は正常な思考です。
またここから追い込みます。

この部屋に入ってこようとしているとイメージすると?「別に」。
近くのイスに座っているとイメージすると?「こわくない」。
何かウソついてるな、とイメージすると?「言われたら言い返した方がいい」。
真横に座ってガン見して、ウソ八百しゃべっているとイメージすると?「別に」。

次は会うと想像した時の不安です。
駅で会う可能性が一番高いのですが、不安感や"会ったらイヤだな"などは?「特になし」。
では実際に会ったとしたら?「イヤな感じはない」。

不安が出てきません。これはもう大丈夫でしょう。

AMの顔の記憶の鮮明度はV=2、声はA=1。
トラウマのアルゴリズム2回ですべてゼロに。
これでAMとサヨナラ。

次はMKです。

[MKの記憶除去]

リンチ以前にMKとは何度かトラブルがあったといいます。
小学生の頃にケンカが1回、しゃべらなくなったのが1回。
...出たか。これは掘り起こさねばなりません。

小4以前はクラスが違い、小5ではトラブルなし。
小6になるとMKはみんなから嫌われます。MKは当時中学の先輩と付き合っていました。ある日MKが休み、その日の学活でみんながMKのことを嫌っていることがわかりました。

MKの嫌われる点はいくつかありました。
まず「私に従わないと除け者にする」という言動。気に入った男子やいじめのターゲットになるような弱い女の子に対して支配者になろうとします。

次は、常にリーダーぶった偉そうな態度。「私は先輩と付き合っているから偉いんだ」と考えているのがミエミエ。とにかく評判の悪い子でお母さん方からも嫌われていました。

ESちゃんはMKがイヤになり一旦絶縁。他の子もMKと喋らなくなりました。このあたりの記憶の映像や音声はなし。感情もなし。

MKは中学に入ってからは先輩がこわいのと、先輩に好かれたいのでペコペコするようになります。ただし自分より強い先輩にだけ。

ESちゃんは中学では(何故かは憶えていないけど)またMKとしゃべるようになりました。そして裏切られました。

中1の冬、ESちゃんはMKと2人で遊んでいたところに先輩と会いました。
ESちゃんは「飽きたから帰る」とMKに言ったのですが、それをMKは「ESは先輩がイヤだから帰る」とねじ曲げ先輩に伝えました。
そして何ヶ月後かにその先輩から「悪口言ったの?」とメールが。

AMは「MKが言った」といい、MKは「AMが言った」というのでわからなくなり、先輩に直接訊くと、「誰かは教えられない」。
結局のちにMKが犯人だとわかったのです。これでまたMKと喋らなくなりました。

ここまで話を聴いてタイムアップ。ヤバイ。
今まで順調だったのですが、MKで大ブレーキの予感です。

しかし時間がかかっても、過去のもつれた記憶の糸を一本一本断ち切ってあげなくては。
カウンセラーの粘り強さが問われます。

ただ、最初にYKを選んだのは幸運でした。


【4回目カウンセリング】

1週間後、4回目のカウンセリングです。

先週はお母さんと一緒に近くの公園までウォーキングを2回行いました。外出はもうこわくなくなりました。
「太ったのが気になっていたので」家にいる間はずっと身体を動かし、腹筋と腕立てまで。
食事も自分で作り気を付けているそうです。
(私の目には全く太っているようには見えませんが。)

少しずつ行動に変化が現れていますね。自発的に。

では前回の続きです。MKの中1の冬の裏切りです。あの先輩はESちゃんには何もしていません。なのでAMから。

AMが「MKが悪口を言った」と言った場面は、記憶に残っていました。この件とは関係のない子の家でです。この場面はV=2、A=1。感情はなし。トラウマのアルゴリズムを1回行い音声をゼロに。映像は点数が減りません。オカシイ。

次にMKが犯人だとわかった場面について確認すると、それも憶えており、AMが「MKが悪口を言った」と言ったのと同時の場面でした。
これはV=2、A=0。感情は「別に」。
おかしいと思い、「MKの裏切りそのものに対してどう思うか」と尋ねると、「最低」「ありえない」「許せない」が次々と噴出。やはり。

MKが先輩にウソを言った日から数ヶ月後、友達の家にみんなで集まっているとAMが「話がある」とESちゃんを外に連れ出し、「実はMKが言った」と告げました。

その直後、先輩が駅に全員集めて真実を問いただしました。そこでMKのウソがみんなにバレたのです。
ESちゃんはMKに「今回は許すけど次裏切ったら許さない」。
それに対しMKは「ゴメンね、もう言わないから」。

友達の家での記憶は映像のみあり、それはトラウマのアルゴリズム1回で除去できたのですが、駅での場面はダメでした。
V=2、A=0、感情は「最低」D=5。
トラウマのアルゴリズムや他のパターンを試しても、感情の点数がほとんど減りません。

何か他の感情は混ざっていないか尋ねると、「リンチの件も合わせて直接MKに言わないと気が済まないイライラ」があるといいます。
しかも最初の裏切りとリンチの件の感情を分けるのが難しい、とも。

まるで解けない連立方程式のようです。しかし私はあきらめません。
私があきらめると少女は救われない。

何か他にイライラはないか尋ねると、
「いろんな人にイイ顔してるので、それもイライラ」
といいます。

たとえばかわいくない人に「かわいいね」と言い、その裏で「あいつかわいくない」。
これをいろんな人に言っています。
特にある先輩に対してはひどく、裏で「メークが濃い」など悪口放題らしいです。
しかもこういうことはいっぱいありすぎて、ひとつに絞るのが難しい、とも。

ここでMKが謝った場面の記憶を除去しようとしたのですが、TFTの様々な技法を試してもやはり点数がほとんど減りません。他の様々な場面の記憶も同様でした。

これほどロクでもないことを大量に行っている子に対しては、容易になくなってくれない、ということです。やはり大ブレーキ。しかしこのままでは進まない。

考えた末、
「次回カウンセリングまで、MKについて思い出せる一つ一つの記憶すべてに対し、古い順にトラウマのアルゴリズムを1回ずつ毎日行なって欲しい。点数は付けなくてもいい」
とESちゃんにお願いし、了承してもらいました。

ここでESちゃんは変わったことを言い出しました。「格闘技をやりたい」。
空手か合気道のようなものをイメージしています。護身術の意図でしょう。

お母さんは戸惑っておられますが、私は身体を積極的に動かすことは無気力化の予防に有効ではないかと考えて「どんどんやってください」と歓迎しました。


【5回目カウンセリング】

1週間後、5回目のカウンセリングです。

先週から特に変化はなく、格闘技は近くに合気道系統の日本武道の教室があり、近々見学する予定とのこと。

MKの記憶に対するタッピングはちゃんとやってくれていました。さすが「早く良くなりたい」という意志を持つ子は違う。

今のMKに対する感情を訊くと、「特になくなってきた」といいます。イライラや、それ以外の複雑な感情、言葉にうまく表せない感情も特にない、といいます。なかなかイイ感じです。

今のMKの顔の記憶の鮮明度はV=4-5、声はA=4。これはまた継続してもらうことに。

MKの記憶はESちゃんの宿題とし(カウンセリングの時間で扱っていても点数が減らず時間がもったいないため)、これからYMについて扱います。

[YMの記憶除去]

YMとは過去小さなトラブル(誤解の類)が一度ありましたが、何かストレスを強く受けた、という程でもなさそうなので飛ばします。

YMはカラオケボックスから。MKと一緒に部屋に入ってきた場面です。
V=2、A=0。感情はナシ。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

部屋に入ってきてからYMはずっと座って、先輩と話しても苦笑いだったそうです。
YMはMKにすべて合わせる(服装から行動まで)ため、MKにくっついてきただけなのでしょう。

YMが先輩と話して苦笑いしていた場面。
V=2-3、A=0。感情はナシ。
この先輩が誰かももう思い出せず、YMの苦笑いの顔も思い出せなくなっていました。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

あとはずっと座っていたYMの姿です。
V=1-2、A=0。感情はナシ。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

カラオケボックスを出てからのYMの姿は記憶になし。
残るは一度だけ登校したときにろう下でMKとYMとが一緒に歩いていた場面です。
この場面はV=1、A=0。感情はナシ。
ESちゃんはうつむいて顔を合わせないようにしていたそうです。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

他にYMに関して思い出せる記憶はなく、YMに対しても感情はないため、YMの顔と声の記憶(V=3、A=3)をトラウマのアルゴリズム計5回で除去し、YMに関しては終了。

次はMZです。

[MZの記憶除去]

この子もカラオケボックスの中ではただ座っていただけ。先輩ともほとんどしゃべらず、愛想笑いしてジュースを飲んでいたそうです。AMの付き添いのようです。

以前も特に親しくもなく、たまに遊ぶ程度の仲でした。
カラオケボックスに入る前の場面と、座っている場面についてほんのわずかに残っていた映像をトラウマのアルゴリズムで取り除きました。

それ以外にはカラオケボックスを出てからの映像もなく、他にMZに関して思い出せる記憶もなく、個人的感情もないため、MZの顔と声の記憶(V=1-2、A=2)をトラウマのアルゴリズム1回で除去し、MZに関しては終了。
 
これで5人について終わりました。
さあもう一度裏切り者MKの記憶を退治しましょう。
MKについて映像か音声が思い出せるか、感情が残っている記憶を古い順から除去を再度試みます。

[再度MKの記憶除去]

まず中1の冬の一度目の裏切りの記憶から。AMが「MKが言った」と教えた場面です。
これはV=1(AMの姿はもうない)、A=1-2(周囲の物音がメイン、AMの声は少しだけ)、感情はなし。
トラウマのアルゴリズム1回ですべてゼロに。

次はMKが駅前で謝った場面です。
V=2、A=1-2、感情は「別に」。
トラウマのアルゴリズム2回でセリフの記憶のみに。
一応重要なセリフなので、セリフを思い出しながらトラウマのアルゴリズムを1回行なっておきました。

この後、リンチまでMKとはトラブルはありません。

次はカラオケボックスでの記憶です。

まずMK登場の場面から。
V=2(MKの顔はなし)、A=0、感情は「別に」。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

次にMKが先輩と話していた場面。
V=1、A=0、感情は「別に」。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

MKは後はずっと座っていたそうです。ESちゃんは座っていた位置だけ憶えていました。
V=1、A=0、感情は「別に」。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

カラオケボックスを出てからMKはタクシーに乗りましたが、その場面は映像も音声も記憶が残っていませんでした。

次は一度登校したときにろう下ですれ違った場面です。これもV=1、A=0、感情は「別に」。トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

他にMKに関して思い出せる映像や音声はないといいます。
イヤ~前回と違い、面白いように点数が減ってくれます。

さあ、最後にMKの顔と声です。
顔はV=3。声はA=3。MKに対する感情は「別に」。
トラウマのアルゴリズム2回で映像をゼロに、音声も2回でゼロに。

おっと、思い出しました。危なかった。MKとMDちゃんが話していた場面です。
ESちゃんは憶えていました。V=2(MKの顔はなし)、A=0、感情は「別に」。
トラウマのアルゴリズム1回でゼロに。

翌日、MKのHPを見た場面。
V=1(ケータイで見た映像がなんとなく)、A=0、感情は「別に」。
2行ぐらいの悪口でしたが、内容は思い出せません。
トラウマのアルゴリズム1回を行いましたが、変わらず。ケータイの画面なのでまあ減らなくてもいいです。

これでMKはオシマイ。

もう一人の登場人物、AZ君がいました。
が、ESちゃんに話を聴いた限り「しつこくアプローチをかけてくるからイヤになった」とのこと、不登校とは関係ないと判断しパス。
 
次は事件の総復習です。カケラも残してはいけません。

YK、EK、AM、MKの4人について何か復活した映像などはないか確認します。
が、各人座っている姿が1点程度戻っただけで、トラウマのアルゴリズムですべてゼロに。
他に不安などはなし。

ただ、不思議なことにYK、EK、MKの髪型の映像がよく残っており(他のパーツはなし)、点数が減りませんでした。
減らない理由がわからないのですが、私が重視しているのは眼ですので、「なんでだろうね~(笑)」と言いつつ放っておきます。
MZとYMは次回にまわします。

これでカラオケボックスの記憶についてはほぼクリーンになりました。

私には残り時間で確認したいことがありました。

新井「もし明日、どうしても学校へ行かなきゃならない用事ができたとしたらどうする?」
ESちゃん「え...行きたくはない」

ESちゃんの考えは、

「今行くと、何かまた悪口を言われるんじゃないか、MKはまだ先輩と仲がいいから何か負けている気がする。まだ自分が弱い気がする。弱いままで登校したらまた負けるんじゃないか。
心が変わったから、次は格好(見た目、堂々と振舞いたい、空手で強く)を変えたい。目立っていても立ち向かえるように。真面目になって陰に隠れたくない。
友達(MDちゃんなど)がMKの方へいっても独りで頑張りたい。でも独りだと昼休みにどうすれば良いかわからないから、やっぱり困る」

お分かりでしょうか。彼女の言葉を翻訳すると「私は不安です。何かで武装しないと登校なんてできません」になります。

これは全然ダメ
トラウマ消えてメデタシメデタシ。
ではありません。最終目標は安定な再登校です。単なるトラウマ治療と異なり「学校へ行く」という行動を自発的に起こせなければなりません。

もちろん、集団リンチから回復しつつある子がすぐ登校できるわけないので、慎重に按配を見極めます。

私が「見た目の理想はある?」と尋ねると、ESちゃんは「サクリナ」と答えます。
桜井莉菜さんは「小悪魔ageha」というキャバ嬢向けの雑誌のモデルさんです。
ESちゃんは「小さいし可愛い、あんな風になりたい」と言います。

アゲハか。微妙だな...。
女の子が夜の世界を志向するときは要注意です。


【6回目カウンセリング】

1週間後、6回目のカウンセリングです。前回からの変化は特に無し。

ということで、前回の残り、MZとYMをサクサクッと片付けて、また質問です。
「明日から学校へ行かなくてはならなくなったとしたら?」
これは、登校できる状態か、登校の意志はあるのか、を確認する質問です。

すると、答えはやはり「まだ行きたくない」でした。

クラスメートと会うのは平気だし、学校までの移動過程に障害はない、と言うのですが。ところが驚くべきおまけが。

「来年の4月から再登校する、という目標にしました」

再登校はうれしいけど4月から?半年も後です。するとさらに驚きがありました。

お母さん「でもこの子、条件をつけるんですよ」

条件とは、

・雑誌に掲載されている痩せ薬を買ってもらうこと
・ドンキホーテとサティーで欲しいメイク道具を買ってもらうこと
・つけ爪とカラーコンタクトを買ってもらうこと
・ピアスを空けること
・エクステ(付髪)をつけること
・ブランド物の服を買ってもらうこと
・ケータイを変えること
・プロのデコ師にケータイをデコってもらう(デコレーションする)こと

ESちゃんは紙にこれらを書いてお母さんに見せたそうです。お母さんは唖然。

今も私の目の前で、要求がのめないお母さんとESちゃんの論争が始まりました。
おかしい。子供がこんなことを言い出すのは必ず裏に何か原因がある。

私は安物のカラーコンタクトは非常に危険である(角膜を傷つける)ことを諭しながら、様々な角度から質問を繰り返します。すると。

ついに出現しました。不登校の陰の黒幕、「人間不信」です。

ESちゃんはあの6人を全く信用しておらず、特にMKに対しては二度の裏切りによって不信感バクハツ。不信感D=10。

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人間は記憶からの学習によって相手に不信感を持ちます。
当然ですね。あんな連中は信用してはいけない。
ところが、脳は無関係な他人まで不信感を抱いてしまいます。対人恐怖が良い例です。

この不信感が解除されないと、登校できません。
不登校児にとってまさしく亡霊です。

人間不信は、「MKがこわい」などの生理的な感情とは異なり、高次の思考判断、信念とも言えます。これもキチンとケアできないと、本当にトラウマから回復したとは言えません。

ただこの悪霊退散、技術的に難しいのです。なぜかというと...

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MKに対する不信は大きく分けて二つ。

◯三度目の裏切りがあるんじゃないか。
◯ESちゃんが学校へ行ったら、色々な人に悪口を言うだろう。

『MKにイヤな顔をされたときにダサい格好をしていると、弱そうに見える。
MKは「あの生意気で目立つESをやっつけてやった。自分はESより上だ」という意識が絶対あるはず。
MKは何もしていないのに「自分は強い」と気取っているから、好きなようにさせておきたくない。
だから、MKより強くなる。』

私がこんなESちゃんの心理を掘り起こすと、お母さんも納得されました。
あの条件はMKの予想される行動に対する精一杯の対抗だったのです。
ひょっとしてと思い確認します。

新井「リンチについて敗北感は?」
ESちゃん「あります。5-6点です」

これもか。復讐心もあり、なんとD=9-10。
トラウマのアルゴリズムを試しましたが、やはり点数は減りません。

どうすべきか迷った私は久々に催眠を行いましたが、根本的な解決になりません。
対策は次回までにじっくり練ることにしました。


しかし、ついにESちゃんは登校の明確な意志を示してくれました。
これで失敗すればカウンセラーの腕が悪いのです。
ESちゃんの責任ではない。


【7回目カウンセリング】

2週間後、7回目のカウンセリングです。

前回ESちゃんは「4月に行くと言ったら絶対行く」と断言しました。
お母さんによると「自他共に認めるがんこモノで完璧主義者」だそうです。

この時は11月半ば、ESちゃんはまだ中2、引きの長期戦もアリです。リンチからの完全回復を狙う作戦に切り替えました。

ただ、ベストではありません。不登校長期化による無気力進行のおそれもあるためです。
カウンセラーの能力が問われます。

前回からの変化は、
・土日以外毎日買い物に出て、夕食を作ってご両親の帰りを待ってくれるようになった。かなり凝ったものを作るそうです。お母さん大感激。
・合気道の道場に見学に行った。「楽しかった」。
・先週日曜日に有名シェフのフランス料理店に行って、コースをお母さんと食べた。
・担任の先生は毎週金曜日にポストに手紙を入れてくれています。そこに、「MKさんは学校へ来てないよ」と書いてあったそうです。これには一同「うーん」と唸ってしまいました。
・家にいるとイライラする。毎日生活が決まっているから、買い物以外に他に行くところがない。ファンシーショップは知り合いがいる可能性が高いので、絶対行かない。

イライラを直接止めようとしてもムダです。原因は別にあります。

前回の続き、人間不信を確認します。
するとMKに対する不信、AMに対する不信、敗北感が強く出てきました。

私は不登校のピラミッドを書いて、現在のESちゃんの不登校の構造をわかりやすく説明しました。

そしてピラミッドを崩すために、次のことをお願いしました。
・MKの二度の裏切りを思い出しながら「許せない」「裏切り」「毎日悪口を言っていた」という言葉を思い浮かべる。
・AMの悪口を思い出しながら「信用出来ない」という言葉を思い浮かべる。
・リンチ全体を思い出しながら「負けちゃった」「勝ちたい」という言葉を思い浮かべる。
・各言葉を思い浮かべながらトラウマのアルゴリズムを2回ずつ毎日行う。

なぜ人間不信を直接消すことが難しいのか。それは事実の記憶が産み出すからです。
私が述べてきた映像、音声、感情ではありません。
しかし事実の記憶を消すことはTFTでもできない。

苦肉の策を私はESちゃんのカウンセリングで考え出します。


【8回目カウンセリング】

2週間後、8回目のカウンセリングです。

前回からの変化は「イライラがなくなった」。ずっと落ち着いた平穏な感じだそうです。それ以外は合気道の道場に通っています。

前回の宿題はちゃんとやってくれました。効果を確認します。

新井「MKの悪口について今どう思う?」
ESちゃん「別にどうでもいい。あまり考えなくなった」

新井「MKの1回目の裏切りのことを今どう思う?」
ESちゃん「あんまり気にしない」

新井「MKの2回目の裏切りのことを今どう思う?」
ESちゃん「信じたりはできないけど、関わらなければいい話だから、そんなに考えないようになってきた。裏切った後に謝ってくれたら許せたかなと思うけど、HPに悪口を書いていたし。もし少しでも悪いと思ってくれているのなら、信じることはできないけど、許すことはできる」

新井「AMの悪口は今どう思う?」
ESちゃん「やっぱり信用できないけど、考えなくなってきた」

新井「敗北感について今どう思う?」
ESちゃん「まだある。以前(1ヶ月前)は5-6点、今は2点ぐらい」

新井「復讐心(見返してやりたい)は?」
ESちゃん「以前は9-10点、今は4点です」

なかなかイイ感じです。この調子で点数を減少させましょう。

次は人間不信について。会いたくない人(MKなどは除く)、喋りたくない人、一緒にいたくない人はいないかを尋ねます。

ESちゃんはまず「同じクラスの人」と答えます。
休んでいたことで"何があったの?"と探りを入れられるのがイヤなのです。
また男子とも今はまだ喋りたくないと言います。
これも"男子はノリは良い分追及されそう"だからでした。

今日出てきた不信などについても、また同じように次回までにトラウマのアルゴリズムを1回ずつ毎日行うようお願いします。
今日の宿題は次のとおりです。
・MKのHPに自分の悪口が書かれていたことを思い出しながらタッピング
・MKが謝らない、自分が悪いと思っていない、と考えながら
・MKが信じられない、と思いながら
・AMが信じられない、と思いながら
・敗北感「負けた」と思いながら
・見返してやりたい、と思いながら
・学校へ行ったら悪口言われそう、と思いながら
・クラスの男子の一部に探られるのがイヤ、と思いながら
・「まだ学校に行きたくない、行く気がしない」と思いながら


【9回目カウンセリング】

2週間後、9回目のカウンセリングです。

この間の変化は色々ありましたが、勉強を家でするようになりました。「ヤバイと思って」だそうです。

さて、前回の宿題の効果を確認しましょう。
・MKの悪口は? → 「別にどうも思わない」
・MKの1回目の裏切りは? → 「別に」
・MKの2回目の裏切りは? → 「前はスゴイ気にしていたけど、今は全然気にならない」
・AMの悪口は? → 「全然平気」
・敗北感は? → 「ないかな」
・「見返してやりたい」は? → 「なくなったかも」
・以前欲しいって言っていたのは? → 「欲しいものはあるけど別に」
・「人に会いたくない」は? → 「そんなにない」
・「男子に追及されるんじゃないか」は? → 「適当に言っておけば良いかな」
・「クラスメートと会いたくない」は? → 「...そんなにないかな。変わってから会いたい」
・「学校へ行ったら悪口を言われるんじゃないか」は? → 「別に思わなくなった」
・不安は? → 「ない。英語と社会ぐらい」

MKとAMについては大部良くなりました。
ただ、クラスメートには「変わってから会いたい、全部変えたい、変わりたい」と言います。
まだまだです。

また質問します。「もし明日、どうしても学校へ行かなきゃいけないとなったら?」
ESちゃんは「明日はイヤだな」

完璧にしないと気が済まない、というのです。具体的に完璧にしたいのは「ダイエットとか髪型とか」です。つまり外見。
内面は?と水を向けると「内面は変わったと自分では思う」。

私は「自分にとって最高の髪型にして、週1-2回駅などのクラスメートに会うかも知れない場所へ朝行ってみて。お母さんと一緒でもいいから」とつついてみました。
ESちゃんの反応は、クチでは了承したものの明らかに乗り気ではなさそうです。


【10回目カウンセリング】

年明け、10回目のカウンセリングです。

やはり駅へは行っていませんでした。エクステを付けるのもやめた、といいます。

ESちゃんは通信講座で習い事を始めたり、パティシエについての話などまた色々変化はあったのですが、再登校に結びつくような動きはありません。

中3の4月にもう修学旅行があるそうで「行き先未定ですけど、東京です。楽しみ。学校から細かい情報は来ていませんけど」といいます。
この発言は安心材料でした。MDちゃんらと同じ班になっているようです。

駅へ行かなかったのは、まだ隠れた不安が邪魔しているはずです。しかし、この回のカウンセリングではうまくそれを掘り起こすことは出来ませんでした。

残った不安は何なのだろう?


20100127 ESさん1s.jpg


左よりESちゃん、お母さん、新井てるかず

 
【11回目カウンセリング】

3週間後、11回目のカウンセリングです。

大きな変化はナシ。しかし顔が変わりました。ずいぶん大人っぽくなったように見えます。
ESちゃんとお母さんに顔の変化を話すと、意外な話が飛び出ました。

先週、なんとMKからメールが来たのです。「久しぶり」「MDからアドレスきいた」。

MDちゃんがアドレスをMKに教えたようです。MDちゃんから「大丈夫だから返事を返してあげてね」とメールが。その直後にMKから来たそうです。
ESちゃんはもちろんMKに返事はしていません。MDちゃんにも。

...こういう事があると顔が変わるのか。ある意味大人への成長なのか。私もちょっと不思議でした。

しかしMKは一体どういうつもりなのだろう?また一同「うーん」と考え込んでしまいましたが、結論は出ず。

ここでまた修学旅行の話が出ました。
修学旅行に行かせてあげたい。パティシエの夢をかなえさせてあげたい。
でもこのままでは4月になっても再登校は難しいでしょう。
不安を掘り起こしてキレイにしてあげねば。

私は粘り強く質問を繰り返します。
「学校に戻ったときに人間関係で不安はない?気になることはない?どんなことでもいい。引っかかることはない?」
「先生は?」
「友達は?」
「クラスメートは?」
あらゆる角度から粘り強く質問を繰り返します。ただし勉強は除外。

やっと出てきました。「気になる部分がある」と話してくれました。

MDちゃんともうひとり、HTちゃんがESちゃんと仲良しなのですが、この3人で一緒の時に、MKなどが寄ってきた時が心配なのです。MKが学校へ来ていたらイヤだな、と言います。

これを分析すると、不安は2つに分かれました。
・MDちゃんとMKが話しているのがESちゃんには気まずい。去年のリンチ後、一度だけ再登校したときに、この場面を見て感じた気まずさが、まだ変わらなかったのです(MKの顔を見るのがイヤなのではない、と付け加えてくれました)。
・MKがいるクラスの前を通ることがあるだろう。もし会ったら気まずい。

一つ目の気まずさはD=6-7。二つ目の気まずさはD=1-2。いずれもその場で消すことがまたしても出来ませんでした。

しかし面白いことがありました。一度タッピングしたとき、ESちゃんはこうつぶやいたのです。
「2人を前にしてどう行動していいのかわからない。自分がジャマかな、と思う戸惑い。これがなければ学校行けるかな」。

学校行けるかな、と彼女自身が言ったのです。今までとちょっと違う。

そこで私はMDちゃんとMKが話している場面をイメージしてMKに集中することと、「自分ジャマかな」と感じて、トラウマのアルゴリズムと鎖骨呼吸法を毎日1回ずつ行なってもらうことを宿題としました。

次回カウンセリングは、1ヶ月後に設定。

ところが、異変が起きました。
2週間後、お母さんからこんなメールが舞い込んだのです。

『お世話になっております。
1月のカウンセリングの後の日曜日、私がお風呂からあがってから、ESから、2月から学校に行きたいと言われました。

カウンセリング後、特に学校に戻るにあたって話し合いをした訳でもないし、ここまで立ち直ってくれたので学校に戻るのをいつにするのかも、本人にまかせてましたので、正直驚きました。もちろんそれ以上に嬉しい一言でした。

前回のカウンセリングでも先生に言われました通り、担任の先生とは15日に時間を調整して頂きましたので、結果ご報告したいと思っております。

昨日はやっと、美容室に行き、愛読している「アゲハ」を持参し、思ったとおりの髪形になったと喜んで帰ってきました。
それでは、来週又連絡させて頂きます。』

間に合った。
私が最も恐れているのは、長期不登校による無気力化です。その前に行動を自発的に起こせるようにならなければならないのが不登校のカウンセリングです。

私はいくつかの注意点をアドバイスしました。そして4日後。

『お早うございます。

昨日、約6ケ月ぶりに学校に行って参りました。
担任の先生と今までの簡単な経過と、今後の学校生活に注意して頂きたい件をお願いしてきました。

ES本人の希望で、一緒に学校に行きたいとことだったので、同行させましたが、やはり学校に近づくにつれ、緊張したのでしょうか、校門~正面入口までは「緊張する」や「ドキドキする」など言い初め、職員室にはだいぶ先生方も残ってる雰囲気を感じたようで、近づけず、遠くで待っておりました。

別室で私とES、担任と約30分程度話ました。

担任は一緒に来ると思ってなかったようで、「よくがんばって来てくれたね」と言われ、安心と緊張といろいろ感情があったのか、ずっと泣いてました。

4月の修学旅行(楽しい出来事)があるので、それをメインに不定期でもいいから登校する、無理して登校しなくて良い、授業の遅れは学校生活になれてから十分取り戻せる能力があるし、あせらないで取り組んでいく、
一番重要な対人関係の件も、クラスに2人仲の良い女友達がいるし(修学旅行も同じ班)、他の女の子も何人かESに電話したい、と言って心配してくれ同級生もいるとの事でした。

例のMKについては、もちろん十分注意して今後の学校生活に配慮していただける話し合いでしたので少し安心致しました。

ただ、ES本人はきっと、元の学校生活も思い出して不安になったようで、特別何が、とか理由はないんだけれど、怖いみたいです。
6ヶ月もずっと辛かったのもきっと、思い出したのでしょうか。

とにかく無理しないで、行きたい時に登校するという方向で一歩進むことができました。
ここまでこれたのも、先生のおかげです。本当に有難う御座います。
すこしでもいいから一歩ずつ、ESが前に進めるよう見守っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。』

本人の希望により、1週間後が初登校日となりました。
そして1週間後のお母さんのメールです。

『お早う御座います。

昨日は5時間目の授業13:40~にあわせて自宅を出まして、学校に到着したものの、校内に生徒がたくさんいるのを見て、不安になったらしく、教室に入っていなくなったのを確認して校内に入りましたが、やはり自分のクラスに行くまでの間、泣き出してどうしても無理だと言うので、別室(私が待機できるように 学校から設けてもらった部屋)で、気持ちを落ち着かせることにしました。

足が思うように運ばなかったのでしょう。しかし、「帰りたい」とは言わなかったので、無理に引っ張ってつれていくわけのもいきませんから、別室で全然違う話をしたり、ちょっと携帯でテレビを見たりしているうちに、授業おわりかけの5分前に、「教室の前まで行ってみる」といいました。

1時間ほどかかりましたが、やっと6ケ月ぶりに自分の通った教室の前まで行くことができました。授業が終わって、クラスメイトのMDさんとHTさんと他2名の女の子が飛び出して迎えてくれました。

私もその姿を見たときは、さすがに涙が出てしまいました。

教室の中には入ることはできませんでしたが、今日も頑張って行くと言ってますので、まずはご報告いたしました。』

エレジーはついに終わった。
天使が高らかに勝利のラッパを鳴らして祝福してくれています。

この2日後が次回のカウンセリングでした。


【12回目カウンセリング】

この日の衝撃を私は忘れられない。
ESちゃんの顔は、強烈な変貌を遂げていました。

可愛いとか、キレイとか、そういう言葉で表現ができない。
素晴らしい陽の気を放っています。高温の輝き。眼が釘付けです。
女の顔は、ここまで鮮烈に変わるのか!

ESちゃんはまだ14才、もちろんスッピン、黒髪、ポニーテール。
内面からの輝きです。化粧による綺麗とは質が違う。

実は記憶がクリーンになると女の子の眼は澄みわたり強い光を放ちます。
これは私だけのちょっとした楽しみです。
(男の子は眼も顔も全然変化しない。ツマラン)
しかし今までとはケタが違う。

ジュースで乾杯。パーティーのようです。

新井「お母さん、ESちゃんの顔変わりましたね~」
お母さん「ええ。(ニッコリ)」
私の思い込みではないようです。

新井「ESちゃんは自分でわかる?」
ESちゃん「いえ」
これだもの。
お母さんの顔も、赤みが増しました。顔だけではなく、私に説明してくれる声が一段とハツラツとしています。

新井「MDちゃんとMKが話していると気まずい、っていうのは?」
ESちゃん「うーん、わかんない」
前回あげられた不安はすべて感じられなくなっていました。
もちろん実際その場になるとある程度は出るでしょうが、おそらくすぐに消えるはずです。
根っこがもうないからです。

ESちゃん「実はMDちゃんが"いつ朝から来んの"ってしつこく聞くんで、"木曜日の朝から行く"って言ったんです」
木曜日は明日です。笑うしかありません。横でお母さんも苦笑い。

朝から登校することについても、ルートを選べば不安は全くない、といいます。
少し遠回りして翌朝MDちゃんと待ち合わせするかも知れず、今晩メールして決めるとのこと。

一応確認です。「前回から何かした?」
しかし私が課した宿題以外は何もしなかったそうです。
自分でも変わった理由はわからないとのこと。
それで、急に"行こうかな~"と気持ちが変わったそうです。
"行こう"という感じではなく。

不登校児が、何もしないのに自然に変化することはありえません。ということは前回見つけた不安が最後だったのでしょう。

実はMDちゃんとHTちゃんは授業が終わるやいなや教室から飛び出してきて、ESちゃんに抱きついたそうです。お母さん号泣。
...そうか。それでこんなイイ顔なんだ。これは私では絶対できません。どうりで今まで見たことなかった顔だ。

記憶がクリーンになる。不安や恐怖がなくなる。心も満たされ前向きになる。
三位一体の変化でしょう。
過去どんな心理療法のセミナーでも、自己啓発セミナーでも、こんなに顔が変化した人は見たことがありません。

先生方も協力的で、ESちゃんの過去を把握して良く接してくれているようです。

私は"今日はさぞ不安が溢れているだろう"と手ぐすね引いていたのですが、もう何も出てこないのです。この日のカウンセリングは全くすることがありませんでした。

実はMKに一度会って話したそうですが、「どうだった?」と聞くと、「別に。もう友達じゃないから」。
これが正しい対応です。

そして
新井「ESちゃんさ、キャバ嬢になりたいって言ってたよね?」
ESちゃん「え、そんなこと言ったっけ」
夜の世界のことは頭から消えていました。
横で聞いているお母さんもニコニコ微笑んでいます。

私は修学旅行までMKらの影響をチェックすべきと考え、3月に1回、5月(修学旅行後)に1回ずつカウンセリングを行い、終了とすることを決めました。

「5月で終わりにしましょう」と私が言った時の、ESちゃんとお母さんの嬉しそうな顔も印象的でした。私を信じて良くついてきてくれました。もちろんお父さんもです。

なお今後も注意は怠りません。MKは学校にいるのですから。


【結末】

金曜日の朝、お母さんからメールを頂きました。

『お早う御座います。
昨日、朝から一人で登校しました。

カウンセリング時、2週間を目安に同行した方が良いと、言われておりましたが、本人が大丈夫だと、申しましたので心配でしたが信用して行かせました。

学校の担任にも朝、電話をいれておき、何かあったら連絡をお願いし、又、登校下校時の緊急の為に本人の携帯電話を持参させる事を許可いただきました。
夕方まで連絡はきませんでしたが心配で、急いで自宅に戻ったら、「学校楽しかった」と、笑顔でした。

3年の先輩にも、久しぶりに声をかけられてうれしかった話など、一日楽しかったようです。
昨日も今日も、朝ちゃんと起きて、髪の毛をセットし、玄関を出て行く姿、ニコニコして「行ってきま~す」と行って出て行く顔が明るくて、安心しました。

又何かあったら報告いたします。』


そして5月。お別れカウンセリングです。

ESちゃんの服装の可愛いこと。おまけに軽く化粧まで。
さすがに化粧はまだまだ。

修学旅行はとても楽しく、何の問題もありませんでした。MKは来なかった、とのこと。
今は高校受験に向けて毎日ハードに勉強しています。

お母さんは「はじめはどうなるかわかりませんでした。けど新井先生を信じて、『先生から"もう来なくていいよ"と言ってもらえるまで、がんばってカウンセリングを続けよう。いわきに行こう』と、ESを励まし続けました」。

「悩んでてもしょうがないから。良くなりたかったから受け続けました」と、ESちゃん。

言いたいけど言いたくなかった言葉。
私は絞り出しました。
「もう来なくていいよ」


【重要ポイント】

世の中には様々な「再登校させる」方法があります。
しかし子供が誰からも強制されず、自らの意志によって再登校する姿はとても美しいことを私は知っています。



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