無視と仲間外れによる不登校 女子高校生TMさん

TMちゃんのカウンセリングは、私がまだ記憶除去に取り組み始めた頃で、今から考えればいろいろとヌケがありましたが、何とかうまくいった実例です。


(初回カウンセリング)

TMちゃん(高校1年生女子)がご両親に連れてこられたのは夏でした。

中学まで人間関係に特に問題なかったのですが、高1の文化祭の直前あたりから雲行きが怪しくなってきました。

TMちゃんは高校入学後3人組の仲よしグループを作り、楽しく高校生活を送っていたそうです。

ところが文化祭の準備をするあたりから、気づくとTMちゃんは1人になっていたり、取り残されたりしていることに気づき出しました。

それも最初の頃は、目立たないようだったのですが、次第に露骨な無視が始まりました。

このあたりからTMちゃんは精神的にかなり不安定になり始めました。

文化祭に至ってその無視はクラス中に伝染。誰もしゃべってくれなくなり、誘ってくれる子もいなくなり、会場から会場への移動もTMちゃんだけ置き去りになってしまう始末。

元仲良しの子とは塾が同じで、その子に塾で思い切って無視の理由を問いただすと、その子の答えは「・・・・」

結局なぜ無視が始まったのか、その原因はわからずじまいでした。

そしてTMちゃんは頻繁に体調不良を訴えて不登校に。

当人は「学校へ行きたい、勉強したい!」らしいのですが(もうクラスメートのことはどうでもいいといいます)、カウンセリングの場に現れたTMちゃんは両親のささいな言葉にも噛みつき、苛立ち、反発。私に対しても明らかに不信のまなざしを向けています。

無視が始まった記憶から、いくつかの記憶を取り除きました。

しかし初回カウンセリング終了時に「カウンセリングを続けますか。どうしますか」との私の問いに、 TMちゃんは黙ってしまいました。

この質問にイエスの答えが即答できないと、私のこれまでの経験上ほぼ100%、子供はカウンセリングを続けようとしません。

「これはおそらくだめだな...」と思いつつ、次回の予約は保留ということにして初回のカウンセリングを終えました。

そして数日後親御さんより「カウンセリングをお願いします」との連絡がありました。

意外に思って尋ねると「TMはものすごく嫌がっていたんですけど、帰りの車の中で、どうやら精神的にすごく楽になったことを実感したらしく、続けると言ってくれました」。




そして2回目のカウンセリング。

引き続き無視の記憶を取り除き、問題なく終えました。

3回目のカウンセリング。

いきなりTMちゃんは私に食ってかかります。

いつまで過去の事をやってるんですか。もうこんなことはしたくありません。早く学校に行けるようにして欲しいんです」。

私は困惑しながらも冷静に諭します。

「TMという家がありました。ある時大きな地震が来て、土台から基礎から家の内部も内装までメチャメチャになってしまい、人がとても住めない家になってしまいました。

さて、この家をもう一度元の快適な家に直したいとします。その時、いきなり家の内装から直して住めるようにするかい?

しないよね。

今TMという家の基礎からしっかり修理しているところなんだ。内装は最後になるけど、これが終われば必ず元の住みよい家に戻るから」

この説明にいったんは納得してカウンセリングを始めたのですが、途中休憩をはさんで再開しようとするとTMちゃんはうつむいて泣き出しました。

「もうヤダ...」

トラウマでこのように精神的に不安定となった女の子のカウンセリングは、いつもギリギリの攻防が繰り広げられますが、TMちゃん相手だとどうも私が押され気味のようです。

泣き出した時点で「今日はもうムリだ」と判断しカウンセリングを終え、帰っていただくことにしました。

そしてしばらく後、親御さんよりメールをいただきました。

「あれからTMは私と一緒に再登校しました。かなり不安に震えながら、何とか教室に入ることができました」。

それを見て、私は「おそらく4回目のカウンセリングをTMちゃんが希望する事はないだろう」ということを念頭におきながら、いくつかのアドバイスを親御さんに与え、カウンセリングを終えることにしました。

さらに年が明けてしばらくしてから、再び親御さんより経過報告をいただきました。

「精神的にも不安定で私達もかなり苦労しましたが、何とか登校を続け、進級する事ができました。ありがとうございました」。

無視が続く教室で授業を受けるのは、彼女にとって非常にきつかったはずですが、記憶の鎖から解き放たれたTMちゃんは精神力で何とかやり遂げました。

私はTMちゃんの意志の強さと根性をたたえて、それを最後としました。

私の仕事のことを人に話すと、「それは素晴らしい仕事をしておられますね。」とよく持ち上げられますが、実際はとてもそんな美しい仕事ではありません。

私の仕事は、どんなに良い結果を得ても、子供から嫌がられることがあります(原因不明の不登校 男子高校生USさんの不登校セラピーの実例参照)。それでもやり通せるのは、TMちゃんと同じく信念があるからです。

今から振り返ると、失敗してもおかしくなかったし、子供からも嫌がられるという苦い思い出のあるカウンセリングでした。