第三原因の原因発見ストーリー Part.2 生まれつきの対人恐怖?信じられない!


不登校の3つの因子とは?

第三原因の原因発見ストーリー Part.2

生まれつきの対人恐怖?信じられない!

あなたは生まれつき対人恐怖を持った人がいると聞くと、信じるでしょうか。
おそらくほとんどの人がそんなバカなと思うでしょう。
私も「それは違う、トラウマがあるから対人恐怖になった。何も外的要因がないのに対人恐怖になるはずがない」と思っていました。
ところが私の考えは見事に覆されました。
 
 

回避性パーソナリティ障害による不登校

 
T 君は有名私立に通う高校1年生です。お母さんによると中学ぐらいからかなり無理して登校しているのがわかり、中3の時には“これはいずれ不登校になる”と予感されたそうです。
そして高校一年生。息も絶え絶えに通っていましたが、ついに夏にギブアップ。
 
それから家でかなり激しく暴れ、家具を壊し、親に暴力を振るい、ささいな事でキレまくります。その反面、夜は寂しいと言って両親のベッドに潜りこんできます。また楽しい話をしているときには大笑いしています。
昼夜逆転でやっと起きてきたら不機嫌のカタマリ。
食事を見ただけで「気持ち悪い」。
外出はほとんどせず、たまに同世代の子達と会わないように図書館に行くぐらいです。
 
お母さんは非定型うつ病を疑っておられました。
一度心療内科へ連れて行くのに成功したものの、医師のそっけなく的外れな質問と態度に T 君は「もう行かない」。
お母さんは低血糖症も疑っておられましたが、何せ検査すらできず立ち往生。
そんな時に拙著「不登校セラピー」をご覧になり、「この子の不登校は正しく悪い記憶によるものではないか」と考え、カウンセリングを受けることにしました。
 
 
初回カウンセリング当日、ご両親に伴われて T 君が姿を現しました。連れてくるのにかなり苦労したそうです。
姿を見せた T 君は笑顔で細身の好青年。ヒョロっとした身体つきは家で暴力をふるっているとはとても思えません。実に愛想よく丁寧な言葉で笑います。
初回のカウンセリングで出てきた学校関係のトラウマをその次から扱っていったのですが、それからは泥沼に沈むようなカウンセリングが続きました。
 
何せ根本的な改善が見られない。精神状態や行動に根本的な改善は全く見られませんでした。
 
小学校時代のトラウマまで粗方除去し終えたところで、私は「うつなんだから親か祖父母の記憶が原因ではないか」と考えて、その記憶に取り組みましたが結果は同様でした。
彼は「これは生まれつきの性格だから治らない」とカウンセリングを受けているのに最初からあきらめたような口ぶりです。
しかも彼は記憶除去の法則が通じないところがあり、新たに彼のための法則を編み出したこともありました。
 
さらに困難だったのが「予約のキャンセル」。2回に1回はキャンセルを繰り返し、そのたびにお母さんは平謝り。元々うつ状態で外出自体なかなか難しいところに、ちょっとしたことで機嫌を損ねて親に暴力をふるい動かなくなる。昼夜逆転で起きないこともしょっちゅう。食事も満足に取らず、とにかく「気持ち悪い」。
カウンセリングが20回を超えたあたりから私も焦り始め、ご両親も見えない成果に不満をお持ちなのがわかりました。
 
ここに至って対人恐怖の根っこ(ルーツ)をしつこく聞き出した私は、彼が言うように「生まれつきである」と言うことを認めざるを得なくなりました。
 
「物心ついた時からずっと他人の事ばかり気にしていました。人はどうして嫌な顔をするんだろう。人はどうして乱暴な言葉を使うんだろう。そういうのを見聞きするたびに、僕は勝手に傷ついていました」。
 
“受け入れられたいのに拒絶が怖い”がずっと幼い頃からあり、これが根本原因だというのです。
 
「今までいくら記憶除去をやっても効果がないのは、根本の対人恐怖があるからです。根本の対人恐怖からエネルギーが各記憶に供給されるから、いくらやっても効果はありません」。
 
私には驚愕でした。トラウマがないのに「他人の拒絶が怖い」とは。しかも「自分を理解して優しく接してくれる人以外は誰も彼も怖い」といいます。
それからはトラウマの記憶の除去はやめ、根本の対人恐怖を減らすようにやってみましたが、これも全く効果がありません。
 
そこで、「本当に生まれつきなのか?生まれつきだとしても、何か強化した因子はないのか?」を考えて、徹底的に掘り起こすことにしました。
 
すると見えてきたのは、「ギャップとズレ」でした。
 
彼は両親が共働きのため、母方の祖父母の家に預けられて育ったのですが、その家風は「古き良き(?)昭和」のテイストをにじませていました。
ムダなものが一切なく、ゲーム等ももちろんなし。食事どきにテレビはつけず、代わりに NHK のラジオ。見る番組は笑点、ドキュメンタリーなど。祖父も厳格でアクの強い豪快な方でした。
つまり、「こんな自分は周囲の子供に受け入れられない」と思ってしまっていた、と考えられました。
 
そこで、それらの記憶に対し再び記憶除去を試みますが、彼がストップをかけます。「先生、それは効果がありません」。
彼の判断を素直に受け入れるようになった私は、また新たな方法を模索し始めました。
しかし、うまくいかない。彼も「今までいろいろやってきて不登校になる前までのレベルには改善しました。けれど根本の対人恐怖は何も良くなっていません」と言います。
 
もう一生治らないんじゃないか…
T君のそんな不安を見て取ったお母さんから、ある提案がなされました。
催眠をやってみてください。何か手を打たないと息子がカウンセリングを続ける意欲が失われそうです」。
催眠は不登校に全く効果がないことをこれまで経験しており、やるつもりはなかったのですが、お母さんの言葉に動かされ、とりあえず一度試してみることにしました。
 
結果は案の定、完全に失敗。
ところがこの失敗が転機をもたらします。
 
彼の中の強い「引け目感」を催眠で扱ったのですが、それからこんな考えが閃いたのです。
 
「引け目感は孤立して存在するのではない。脳の機能によって生み出されるのではないか。つまり恐怖心も、そのものに対してセラピーを行ってもムダである。したがって、恐怖心を生み出す脳の機能とメカニズムに対してセラピーを行えばいいのではないか?」
 
催眠の失敗によってこんな考えが閃いたのです。
 
そこで彼に「恐怖心は具体的にどう感じているのか」をまたしつこく聞き出すと、実は三つのステップに分解できることがわかりました。
 
・相手が自分を拒否することを(自動的に勝手に)イメージする
・それによって勝手に傷つき(ストレスを感じ)
・恐怖心が生まれる
 
これもまた驚きでした。勝手にイメージして勝手に傷つくとは。
 
しかも私が「本当は本能的に先に恐怖心があって、その後付けの理由として、相手の拒否をイメージしてしまっているのではないか?」と尋ねると「そうかもしれません。自分ではよくわかりません」。
 
これこそ、回避性パーソナリティー障害(回避性人格障害)の症状です。他人の拒絶や批判を恐れて何もできなくなる。これがトラウマなしで成立するとは全く驚愕でした。
しかも若干ながら依存性パーソナリティー障害も混ざっています。(いずれも医師の診断ではありません)
これから、この各ステップとそれらのイメージが恐怖心を生み出す脳の機能を推定し、それらに対して「生体変容メソッド」を考え出し、施術してみることにしました。
 
それでもなおキャンセルは続き、相変わらずうつ状態が続いていたのですが、2、3週間経ってからお母さんのメールには「家で全く荒れなくなりました。暴力もありません。昼夜逆転も自分で直そうと努力しているのがわかります。今まで死にたいとかネガティブのカタマリだったのが、少しずつですが前向きな言葉も言うようになりました。外出も増えています。荒れないので、すごく楽になりました。次のカウンセリングが楽しみです」。
 
お母さんのメールに微かな可能性を感じて次のカウンセリングに臨んだのですが、カウンセリングに現れた T 君はまたもうつ状態。非常に気分が悪そうです。
 
新井 「お母さんのメールによると全く荒れなくなったそうだけど?」
T君 「荒れる元気もなくなっただけです」
 
またしても1本取られました。しかしその日の彼は違いました。今までうつ状態だと言葉が少なかったのですが、その日彼は言いました。
 
「気持ち悪い。立ってられない。クラクラする」。
この何気ない言葉が大きな転機になったのです。
 
“クラクラする?それって低血圧か貧血では?”
私も昔低血圧で、上が90を切ることもしばしば、男で90を切ると立っているのもつらいということを、身をもって体験していました。
そのため、即座に私の頭にはいくつかのキーワードが浮かびました。
起立性調節障害
低体温(深部体温)
低血糖
 
彼は冷え性で平熱も低く、うつ状態から考えると低血糖もありそうです。
私はお母さんに T 君の過去の健康診断や血液検査の結果を尋ねました。すると血圧も血糖値も、異常とは言えないまでもかなり低く、1年程前に低血糖を疑ってホームドクターに相談したが、鼻であしらわれた、とのこと。
お母さんは慧眼です。
さらに「こういった症状はいつからありましたか?」との私の問いにお母さんは「生まれてから立てるようになったころ、1才頃、立ちながらフラフラしていました」
このフラフラはお母さんには運動能力の発達の問題ではなく、明らかに内科的な症状に見えたそうです。
お母さんは非常に心配し、周囲にこのことを訴えるも、これもまた「心配のしすぎだ」で片付けられてしまったそうです。
間違いないでしょう。「彼は生まれつき低血糖症の傾向があった」と私は仮説を立てて、「血糖値を調節する脳機能を改善するセラピー」を考えだし、彼に施してみました。
 
そして翌日。2日連続のカウンセリングでした。
 
現れた彼の様子が今まで違います。今までと違い、机にうつ伏せず、気持ち悪そうな素振りや、耐えるような素振りを見せません。そして、
「生まれてから昨日までずっとあったストレスが全くありません。すごく不思議な感じです。ポッカリ穴が開いたような変な感じです。ゼロなんです。だから別に幸福感もありません」。
 
なんという劇的な変化。彼は盛んに「何もない」「虚無だ」と繰り返します。
今までいつもいつも頭の中を占めていたストレス感は低血糖から来るもので、どうやらそれが消失してしまったようです。
そして対人恐怖のうち、「イメージを勝手に作ってしまう」のもなくなってしまいました。
 
ただ対人ストレスを感じるような状況をあえて想像してもらうと、「まだ嫌です。ストレスあります」と言います。
 
お母さんの表情も今までになく穏やかで晴れやかです。家でわが子がすっかり落ち着き暴れたりすることもなく、食事も生活サイクルも改善されつつあるのを、初めて明確に実感されたようです。
 
お母さんは私のカウンセリングに加えて、栄養療法の観点から独自の食事の工夫を行い続け(何せ彼は食べないので、必要な栄養を何とか摂らせようと様々な工夫を行っていたそうです)、それ以外にも散歩や外出を促していました(何せ彼は運動しないので、運動が脳に与える良い影響を知っていたお母さんはその点についても工夫されていました)。
 
お父さんも忙しい中、仕事帰りに彼を卓球のできるところへ連れて行き、身体を動かすようにしたり、外へ頻繁に食事に連れて行ったりしていました。
 
ご夫婦が一致して協力されておられました。
 
お母さんは、私のカウンセリングが始まってしばらくしてから、某大手企業の部長職を休職、家庭で息子の世話に専念し始めました。
 
私にもっと力があれば休職はさせずに済んだと思うと申し訳なく思います。
 
この回から「体調安定」「根本の対人恐怖の改善」を目標として様々なセラピーの試行錯誤を始めました。施す内容は彼の意見をかなり取り入れました。
 
時に私が試行錯誤の末考えすぎて「劇薬のようなセラピー」を施してしまい、逆に一旦悪化させてしまうこともあり、その時々の環境因子や、家庭の状況等によって調子を落とすこともしばしば。
ご両親と一緒に卓球用品を買いに高田馬場へ行った時には相当悪化してしまったようです。
 
ところが一旦調子が落ちても回復が早く、お母さんは「その点についてはもう心配していません。今はすごく楽ですし」とおっしゃいます。
 
私も一時は「もうこれ以上治す手立てがない」と考えていた対人恐怖も、いつの間にやらジリジリと改善し始めていました。
 
恐怖やストレスを感じる対象がどんどんと減りだし、その内容もより具体的で限定されたものになってきたのです。
 
例えば、当初は「誰でも彼でもとにかく怖い」だったのが、「自分が話した時相手がどう反応するかが不安」「相手に質問されたときうまく答えられるかが不安」「新しい環境(高校や大学等)が不安」等に、どんどんと規模が減少していきます。
 
そして7月。
以前から「夏休みに入る前に一度学校へ行こう」という話になっていたのが、ついに7月末、約1年ぶりに登校に成功
その場で担任の先生と学年主任の先生と面談し、9/1からの登校を約束してきたとのこと。
当然、この登校時にもストレスが大きく、「同じ高校の制服を見ただけで不快感や嫌悪感、イライラがわき上がってきました」。
 
つまり、恐怖が弱まり、それに呼応するようにイライラに変わっているのです。猛威をふるった回避性パーソナリティー障害が、すっかり量も質も弱まった、ということでしょう。
 
8月に入りました。9月からの登校が迫るにつれまた調子を崩し、昼夜逆転とうつ状態に。親への暴力も復活。
 
「学校は行きますよ。でも行ってもまたストレスだらけだし、楽しいことがなんにもない」。この台詞には私も悩みました。改善していないのか。
 
しかしよく考えれば、「新しい環境」は彼のイヤなことのリスト中トップに近いモノがありました。改善について尋ねると、「2月3月と8月以外は基本的に改善している」「7月の改善は本物。新井先生に遠慮したのではない」。ならば、9月に入って登校しながら(新しい環境に身を置きながら)もう一度7月のセラピーを行えば、改善が可能なはず。
 
そして8月末。私がしつこく勧めていた低血糖症の検査をようやく受け、結果発表がありました。
 
結果はナント、
・低血糖症
・糖尿病、インスリンの過剰分泌と遅れ
・その他鉄欠乏性貧血など6つの症状
 
危なかった。特に糖尿病に気づかないままだとどうなっていたか。
 
そして。
残念ながら彼は退学、しかし予備校に通うまでには回復。
ただやはり身体がどうしてもついてこないようです。
大学進学の意志はあり、今後もあきらめるつもりはない、とのこと。
 
このT君の実例を機に、私のカウンセリングはすっかり変わってしまいました。
後天的なトラウマのみならず、先天的な原因を見逃さないようになったのです。
 
また、これを機に第三原因の発見にもつながりました。
 
おそらく、不登校に限らず様々な精神的な問題で、このような先天的な原因は見逃されていると思います。
ここで大切なことは、
「本当に先天的なのか、実は後天的なモノの影響もあるのではないか」
「どこまで治療の対象とすべきか」
です。
これをしっかり判断しなければなりません。

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